『ヴァイブレータ』

ヴァイブレータ』 ★★★★
製作国:日本 公開年:2003 配給:シネカノン 上映時間:95 分
監督:廣木隆一 脚本: 荒井晴彦
出演:寺島しのぶ/大森南朋/田口トモロヲ/牧瀬里穂/村上淳/野村祐人他

『東京タワー』の寺島しのぶにすっかりヤラれて借りてきました。大森南朋も出てるしね。
これはレンタル屋で観ようかな?と手に取っては止めて・・・・・という映画でした。気になってたんですが。

私はこの映画の寺島しのぶの境遇とほぼ同じ、視聴ターゲットど真ん中の人間(30代・女・独身)な訳ですよ。 いや、しのぶの方が映画の設定では若かったな。アイタタ。
私がこの映画観るの躊躇ってたのって、正にこれが理由で、きっと、面白いんだろうけど、嫌〜な気持ちになるんだろうなぁ、身に積まされるんだろうなぁと思ってたんですよ。
でも、意外と不快感を感じなかったんですよね。30代独身女にとってはアイタタな痛いシーンが続出なんだけどね。
かといって、しのぶに共感出来るかっていったら、私はそうでもないんだけど。(苦笑)元々、恋愛体質な人間じゃ無いので仕方ないなぁ。
そんな私でも、しのぶの気持ちが分かった気になる不思議な映画でした。
恋愛したがりな人間でないのに、「あなたに触りたい」と衝動的に思ってしまう気持ちが分かるんですね。
それはきっと、大森南朋が魅力的だからなんですよね。オスとしての魅力。

頭の中の声が煩くって、眠れない。でも、食べた物を吐いたら、安心して眠れる。
現代特有の病を抱えた女。思考にがんじがらめにされてる女が、本能的に「こいつだ!」と思うのに、大森南朋はピッタリでした。男っていうより、オスの色気があるんですよね。生命力とか性欲とか、人間としてではなく、動物として生きていく上で必要な力に溢れてる感じがする。しかも、そういうのがいかにも見た目に表れてギラギラしてるっていうんじゃなくって、大きな力を内に秘めてるような。独特の佇まいだと思います。
大森南朋ってただの優しい男を演じても『何かある』と感じさせてくれるのはそこなんでしょうかねー。

そして、寺島しのぶが本当に良かった。痛い女を弱く強く自然に演じてました。
この映画、役者とキャラの境界が凄く曖昧なんですよね。そういうドキュメント風映画と言えば、『誰も知らない』等の是枝監督なんかが有名なんだろうけど、この映画は映像や構成でなく、俳優の演技でそう感じさせるのが凄いんです。カメラアングルは多少、ドキュメント・タッチなんですけど(車に乗って流れる風景を見ているようなアングルが多い)
寺島しのぶは本当に自然に玲という女になっていました。これは大森南朋にも言えるんだけどね。その辺の誰かの日常をカメラで写してるのを見せられてるような気分になりました。凄くリアル。セリフを喋ってるって感じがしないの。
度々、玲(寺島)の心の声が昔の無声映画風に字幕で出て来るんだけど、煩いとは思わなかったですね。この演出はすんなり受け入れられました。
あと、寺島しのぶのヌードが見れるんだけど、彼女はスタイル良くって綺麗ですねー。全てが丁度良いんですよ。痩せ過ぎでなく、でも、しっかりとくびれた腰に柔らかそうな肌。大きくも小さくも無い胸。私が男だったら一番そそられる体ですね。(笑)
濡れ場は良いモン見せてくれてアリガトー!!って気分になりました。かなり際どい事してて、大変リアルなんだけど、私はあんまり興奮はしなかったかな。しのぶに共感出来る人はメッチャ興奮出来ると思うんですけどね。あと、大森南朋好きには堪らんかと。



※※※※※※※※以後ネタバレあり※※※※※※※※
最後の2人の別れ。呆気なかったですよね。
彼女が彼に会って一緒に旅をして、抱かれた事で、最後に「自分がいいものになった気がした」という気持ち。
私は彼女にとって、彼と別れられた事が「いいものになれた」って事なのかな?と思っています。彼女にとっての彼の存在は、自分を愛してくれて、抱いてくれて、抱き締めてくれる。そして、壊れた自分も許容してくれるという大きな存在。その男と離れられた事が彼女にとって、一歩踏み出せた事になったのかなと。
だから、私にはあの終わり方が一番良い終わり方なんですね。これから先2人がどうなるか分からないし。

観終わった後に何故か爽やかな気分になれたんですよ。そんな映画じゃないのになー。
それはラストが前向きに終わった事と、トラックから見える風景の美しさからかな。
とても綺麗でした。日常のそこら辺に美しさは転がってるもんなんですね。