『理由』

『理由』 ★★★
製作国:日本 公開年:2004 配給:アスミック・エース 上映時間:160 分
監督:大林宣彦 原作:宮部みゆき 脚本: 大林宣彦/石森史郎 音楽:山下康介
出演:村田雄浩/岸部一徳/久本雅美/宝生舞/松田美由紀/赤座美代子/風吹ジュン/山田辰夫/渡辺裕之/柄本明/渡辺えり子/菅井きん/小林聡美/古手川祐子/加瀬亮/細山田隆人/ベンガル/伊藤歩/南田洋子/石橋蓮司/小林稔侍/宮崎将/宮崎あおい/永六輔/勝野洋/片岡鶴太郎/根岸季衣/峰岸徹/裕木奈江/中江有里/他

大林宣彦だから楽しめた部分もあれば、大林宣彦だから醒める部分もあったかな。2時間40分もの長さをそれほど退屈せずに見れたのは大林宣彦の映像センスのおかげだろうし、でも、非現実的な映像画面が話と合って無い時があって 違和感を感じる時もありました。リアルな話だけに余計にね。原作は未読なんですが、たるみさんのレビュー(id:doukyoninday:20050728#1122561078)によると、かなり原作に忠実なようです。これは原作を好きだったら嬉しいかもね。未見の私はまず、出演者のあまりの多さに驚いてたんですけどよ。100人以上ですもの。その100人の殆どが事件の証言者として登場するんですが、その登場のさせ方が架空のドキュメント番組のカメラ越しに映ってるという設定のようで。だから、もう一つのカメラを通してるので、皆がこぞって証言する姿に違和感が無いんですね。だから、証言だけで話が進んでいくというスタイルも成立する。かといって、映像が本物のドキュメントのようではなく、ちゃんと映画の画面になっているのが大林宣彦の映像センスだと思います。






=======※以後ネタバレあり=======

ドキュメント番組風に話が進むのも原作に忠実なのかは分からないんですが、昔流行った『かまいたちの夜』とかシナリオゲーム的な感覚で見れましたね。先に進むにつれて、まるで自分自身が核心に迫っているような感じがね。だから、出演者の証言ばかりなのに飽きませんでした。私は放映時間を確認せずに観たので2時間40分もあるとは知らなかったんですけど、長いとは感じなかったな。
しかし、犯罪サスペンスとして考えると弱いというか、分かり難い作りの映画ですよね。私は不動産には詳しくないし、占有屋についての知識もゼロに等しい。だから、勝野洋が家を手に入れられない、そこから最終的には殺人に発展してしまう経緯があまり分からなかったです。この辺は説明不足だったような気が。私はニュアンスで「邪魔されてるから家が手に入らないんだ」「大金を手に入れるのに邪魔だから殺しちゃったんだ」と適当な解釈で観てましたが・・・・・・・ここらがもっと分かり易かったらサスペンスとしても楽しめたろうなぁって。一家4人殺人事件の一番の見所というか盛り上がり所の、一家4人が全く家族ではなかったという真相が分かる所も、淡々としてて「あ、そうなんだ」程度の驚き。ここはもうちょっと盛り上げて欲しかったかな。殺人の真相も同じく。「あ、そうなんだ」って。(苦笑)驚きは全くありませんでしたね。だからサスペンス的に楽しむというよりも、それぞれの人生の流れを楽しむというか。一つの『殺人事件』で繋がった人間関係の糸を手繰る事こそ、この映画の面白みなんだろうなぁって。
キャストは豪華な面々を見てるだけで満足。ただ、重要な役回りの役に若い年齢の子が多かったんですが、経験不足な感じがしましたね。宮崎あおいのお兄ちゃんもちょっと力不足かな。(ちなみに妹と顔は全く似てません。鶴久政治みたいだった)あと、久本雅美は・・・・・・・この人の演技苦手だなぁ。ワザとらしい。ま、ベテラン俳優や、宮崎あおい伊藤歩加瀬亮などの経験豊富な役者陣には大満足でした。加瀬亮良かったな〜〜私の好みの顔の超ど真ん中ストライクなのが加瀬君なのであります。顔も好きだけど、やっぱこの人の雰囲気が好きだわ。居るだけで画面が成り立つんだよね。ベテランキャストで一番凄いと思ったのは赤座美代子・・・・・・リアル過ぎますよ。あと、絶対、違うと分かっているんだけど、岸辺一徳が出てくる度に犯人のような気がして仕方なかったです。今でも犯人が岸辺一徳のような気がしてます。役というより、一徳が犯人。

これはかなり現実的な話で、今の時代に実際に起こり得る話なんですよね。高級マンションを取り巻く人間関係の希薄さや、不動産や占有屋などの現代的社会の仕組みとか。その中で起こるべくして起こった殺人。だけど、大林監督の映像ってどこかファンタジーっぽいというか。妙に色のきつい下町とか、最後の加瀬亮が真っ暗な街に飛び込んでいくという描写とか、題材とミスマッチな感じはしましたね。あと、最後のエンディング・・・・・・・あれは何なんでしょ。耳について離れないんですけど。エンディングは普通の音楽の方が良かったように思います。観てから2週間も経つのに、まだ頭から離れない・・・・・・2年ぐらい経っても頭に残ってて口ずさめそうですね。「さーつじーんじけんがむすびきずなーー」・・・・・・・・・延々とこの言葉だけが流れるエンディング。これが一番サスペンスだったわ。