『タイヨウのうた』

タイヨウのうた』 ★★★★☆

製作国:日本 公開年:2006 配給:松竹 上映時間:119 分
監督:小泉徳宏 原作:坂東賢治 脚本:坂東賢治 音楽:YUI/椎名KAY太
出演: YUI/塚本高史/麻木久仁子/岸谷五朗/通山愛里/田中聡元/小柳友/ふせえり/小林隆/マギー/山崎一/他

この前、試写会で2回目を観て来ました。YUIのライブ付き試写会です。素晴らしかった。そして、映画自体、やっぱり2回目の方が泣けましたね。頭痛くなるぐらいに泣いてしまいました。本当に大好きな映画です。多分、3回、4回と観ると思います。試写会で1,000円で観れる特別ペア割引チケットを頂いて、今回、2回目なので2枚持ってるんですが、全部、自分で使うと思います。券には『本作を薦めたいご友人・ご親戚の方などにお渡し下さい』って書いてあるのに。(笑)取り合えず、一緒に映画を行く相手は変えて。いい映画なので色んな人に見て欲しいんですよね。
なんというか、この映画の場合、好き過ぎて作品に妙な肩入れをしてる自分が居ます。なので、まともなレビューってものが書けないかもしれませんけど・・・・・・・・・一人でもいいからこのレビューを書いた事で観たいって思ってくれる人がいたらと思いまして。多分、私のこの思い入れは半端じゃないと思います。(苦笑)ウザイ!って。今は同じくこの映画を大好きになった友人と鎌倉にロケ地を巡りに行こうかと言ったり、薫が付けていた時計を欲しいと思ったり・・・・・・どちらも凄く金の掛かる話で貧乏人の私には死活問題なんですが、本気で考えております。薫の付けてた時計が本当に素敵なんですよ〜〜。(ここで紹介されてます。素敵でしょ?)27,000円・・・・・・・・ううう、しかし欲しい。買おうかな〜。
いや〜〜予告観た時に、この映画、絶対好きだ、って確信に近いもんはあったけど、ここまで好きになるとはね〜〜。私がこの映画を好きなのは、単純に凄く笑えるからかもしれません。面白い映画だから。そしてハッピーな映画だから。どうも、この映画は所謂『難病モノ』という括りにされがちなお話なので、これだけは先に書いておきます。可哀想なお話や可哀想な人を観て号泣したい人にはオススメしません。残念ながら可哀想な人は1人も出て来ないんですよね。治療法のない病気の女の子は出て来ますが、彼女は決して不幸ではないんです。とても幸せな人です。彼女に関わる人達も笑顔が素敵でとても幸せ。笑えて幸せな映画だから大好きなんですよね。そしてとても可愛らしい映画だから。
この映画に強く惹かれるのは、弱冠・25歳で初監督の小泉徳宏監督と私の感性が似てるっていうのもあるかも。もし、私が『難病モノ』の映画を撮るとしたら、きっとこういう感じの映画を目指したろうなぁと言うのが見事に形になってる感じでした。笑えて湿っぽくなく抑え目で・・・・・・と。『セカチュー、いまあいより泣ける映画』なんて銘打たれてるから、それらの作品と同じ感じかと思われるかもしれませんが、『世界の中心で愛をさけぶ』とは全く違います。そうだな〜〜テイストで言うと私が大好きな作品、『猟奇的な彼女』とか・・・・・・あと、主人公が死ぬのにひたすら明るい『木更津キャッツアイ』とか。『パッチギ』・・・・・とか、笑えて笑えて、笑って泣けるっていう。試写会場では2回とも絶えず観客が笑ってましたもの。私は2回目の方が泣けて泣けた訳なんですが、それでも1回目の鑑賞の時と同じで最後の方まで泣きませんでした。だって笑えるんだもん。それと皆が前向きなんでジンとはくるけど、涙が溢れるって事はないんですね。ただ、終わりの方はもう号泣の号泣。ずーっと涙がだーって出て、ちょっとヒクッってなったりしてもう嗚咽に近いもんが。(恥)あ、小泉監督がね、舞台挨拶で言ってたんだけど、「エンドロールもよく見て下さい」ってさ。んで、2回目は涙目でエンドロールをじっくり見た訳。そしたらまた滝のように涙が出てきました。あのエンドロールは反則ですよ〜監督。泣くって泣くって〜。映画で感動した人はエンドロールもよく観て下さいね。泣けますから。

この映画はYUIでないと成立しないだろうな〜って思います。例えば、他のキャラクターは違う役者が演じても成立するかもしれませんが(とはいえ、皆、ベストキャストだと思ってます)この主人公・雨音薫はYUIでないと成立しない。それはこの映画は歌が重要だからっていうのもあるけど、彼女の持つ全ての要素が、映画の雨音薫というキャラクターの魅力に、そして映画の魅力に繋がってるからです。彼女のとても可愛らしい声や、彼女の映画のスクーリーンではとても小さく見える体躯、とても幼く見える顔、そして彼女の持つ透明感。そんな彼女が体の全てから搾り出すように眉間に皺を寄せて歌う姿は、まるで歌を歌えるのは今しか無いと訴えてるようで・・・・・・・・・・・だから、彼女が歌うだけで感動してしまうの。実際、試写会では彼女が歌っただけで鼻を啜る音が一杯聞こえてきましたもの。彼女は見た目だけでは難病を抱えてるように見えないんだけど、彼女の歌う姿にはどこか刹那的で、1曲1曲を今しかないという気持ちで大切に歌ってるんだろうなぁと。説明は一切無しで、歌う姿だけで伝わってくるのよね。YUIは演技初挑戦って事でセリフの言い方など拙い感じに見えましたが、かえってそれが偽者臭くなくって良かったですね。彼女の自然さのおかげで感動出来たんだと思います。そうそう、この映画ってよくYUIのPVみたいって言われてるんだけど、別にそれでもいいじゃんって思うんですよね。この映画の中で、YUIは完全に雨音薫になっていて、そのYUIがこの映画の為に作った『Good by days』は言わば雨音薫の生きた証・・・・・魂そのものなんだから、その曲を全面に出してて何が悪いと。その曲が魅力的に見える作品で何が悪いと。この『Good by days』は雨音薫が作った歌詞なので、映画と見事にシンクロしてます。もう、「格好良くない優しさに傍にあるから」という歌詞だけで泣けますよ。薫から見た孝治そのものじゃないかと。それと、この映画がPVっぽいって言われるのって、セリフが少ないっていうのもあるんでしょうが、あんまり説明臭い映画は好きでないので、私にはそれが心地良かったです。画で見せるっていうのかな。上手いな〜〜って思うのが、夜しか生きれない薫が好きになった相手が真っ黒に日焼けしたサーフィン大好きな高校生。この一目で分かる対比・・・・・・・・・・・・そういう画だけで見せるとか役者の表情だけで見せるとか、そういうのが凄く上手い。どの役者さんも表情が素晴らしかったです。だからセリフで説明がなくっても、キャラクターが何を考えてるのか分かるんですよね。YUI以外の役者さんは、多分、湿っぽくならないように選んだキャスティングなんだと思うけど、それも見事に成功してました。とにかくみんなコミカルな演技が上手い!!面白いの。塚本君は、最初、この映画のポスターを見た時、「うわー幾らなんでも高校生はキツイわー」と思ってました。それは始まってしばらくもそう思ってたんですけど・・・・・・・・段々と高校生に見えてくるから不思議。あーいう活き活きとした表情って高校生ぐらいの若さの子にしか出来ないもんな〜〜とか思って観たら、途中から高校生になんも違和感無くなりました。ちょっと老け顔の高校生ってことでアリです。つーか、この映画の孝治って役は、リアル高校生世代の若い役者さんでは出来ないようにも思います。それはYUIの相手役って意味においてなんだけどね。YUIって見た目は子供みたいに幼く見えるのに、なんか凄くずっしりとしたオーラを感じるので、相手役がリアル高校生ぐらいだと2人の空気のバランスが悪く感じるかもしれません。なので、YUIよりも実質に年上で、見た目も大人っぽい方が良いと思うなぁ。だから、23歳の塚本君が演じて正解なのかも。塚本君はとにかく滑り知らずっていうか、彼が何かする度に観客が笑うっていう・・・・・・そこ笑うとこじゃないのに、っていう場面でも彼が何かすると笑いが起こる・・・・・・・そのぐらいお笑い要因としても大活躍。塚本君はそういう軽い芝居が得意だから本領発揮ってとこでしょうね。でもね・・・・・・・・中盤から後半に掛けての孝治が!!凄く格好良くて切ないの。前半と後半では孝治の表情がまるで違うんですよね〜。この映画の切なさはきっと孝治にあると思うんですよね。直接的に泣ける部分は薫の父親の部分が多いんですが、全体を通すと、孝治の存在があって泣ける映画なんだと思います。おバカでお気楽な普通の高校生・孝治と、不治の病を抱えた少女・薫というコントラストが切なさを倍増させるんですよね。笑いの中にこそ本当の切なさはあるんだと思います。孝治がふと見せる表情がね・・・・・・・・・・・・キュンってきます。ほんと、良い表情するんですよ。それは大袈裟でなくほんと微かな顔の動きなんだけどね。それが、悲しみを外に出すまいとしてる感じで余計に切ないんですよね。ほんと、塚本君の演技、いいです。そして、そして孝治同様沢山笑わせてくれた薫のパパ・・・・・・・・・・岸谷五朗がいいんですわ。YUIは全然演技してる感じじゃないし、塚本君もかなり自然だけど、岸谷五朗はしっかりと映画の中で演技してる感じ。でも、それが出過ぎてないので、映画が凄く引き締るんですよね。哀しい部分は哀しく、そして軽い部分は軽くって、きっちりとお芝居をされてました。それが厭味じゃないのよね。薫のパパは本当に素敵なパパです。あんなお父さん居たら世の中の子供は絶対に道を誤らないぞ〜っていう。お母さん役の麻木久仁子はとても温かい雰囲気で、お父さんとも仲良さそうで良かったな。麻木久仁子とYUIが凄く似てて、本物のお母さんみたいでした。そういう視覚的な部分も結構大事な要素で、薫と父と母と3人本当に家族みたいでした。あと、孝治と薫の父親も似てるんだよね。顔がっていうんではなく、雰囲気というか。2人が話してる時の掛け合いみたいなのも凄く息が合う感じで。薫はファザコンですね、間違いなく。(笑)そんで薫の親友の美咲役の通山愛里ちゃんが面白くって可愛かった〜〜〜。彼女も孝治同様、笑わせてくれましたね〜〜面白いんだけど凄くイイ子なんですよ。そんな素敵な彼氏、両親、親友に囲まれてるから、薫は決して不幸じゃないんだよね。どのキャラクターも本当に魅力的です。引き立て役のような存在が無いのもいいねぇ。そんな家族愛というか、そういう人間同士の繋がりが中心に描かれてるので『純愛映画』としてはちと弱いかもしれませんね。薫と孝治の関係は小学生並の初々しさだし・・・・・・・・・・・・・あんな初々しい高校生、今時いるか!って思う部分もあるけど、鎌倉のロケーションと、殆ど社会との関わりを断ってる薫と、おバカで真っ直ぐで純粋な孝治ってキャラクターだから、ちゃんと成立してる。もう小学生な2人が可愛くって可愛くって。(笑)2人の部分はキュンっていうよりニマニマしちゃうんだよね〜〜可愛くって。予告でも流れてるキスシーン。あそこも可愛いんですよ。

あ〜〜本当はね、ここの場面が良かったね、とかあそこの場面って泣けるよね、とかいちいち説明したいんだけど、思いっきりネタバレになるし。(苦笑)まだ上映もされてない映画だしなぁ。是非、沢山の人に映画館で確かめて欲しいですね。この映画は映画館で観ないと損だよ〜〜〜YUIの歌を大音響で聴かなきゃ。私が一番好きなシーンはね〜〜観た人だけに分かる書き方すると、一番最後の最後の孝治のシーン。あれがあるから、この映画がめちゃめちゃ大好きなんですよね。なんて希望のあるラストなんだって思います。本当に大好き。