『どろろ』

どろろ』 ★★☆

製作国:日本 公開年:2007 配給:東宝 上映時間:138 分
監督:塩田明彦 原作:手塚治虫 脚本:NAKA雅MURA/塩田明彦
出演:妻夫木聡/柴咲コウ/瑛太/原田美枝子杉本哲太/麻生久美子/土屋アンナ/劇団ひとり/中村嘉葎雄/原田芳雄/中井貴一/他


世間ではあんまり評判の宜しくないこの映画。まぁ、つまんなくっても天下の妻夫木聡様と柴咲コウ様がお腹一杯観れたらいいか〜と適当な気持ちで観に行ったら、正にその通り!ビンゴ!!ってな、それだけが全ての映画でした。妻夫木聡柴咲コウさえ観れたらいいわ、ってそんだけが目的だったら、その目的は十分達成出来ると思いますわ。特に妻夫木ファンには堪らんかと。ちょっと前やったハリウッド超大作バカ映画『Mr.&Ms.スミス』って、ブラッド・ピットとアンジョリーナ・ジョリーが全てっちゅーか、この2人でなかったら観るのきっついわーってアレに近い。主人公2人が公私にラブラブバカップルっちゅーのもソックリですな。ケッ。
妻夫木聡柴咲コウ瑛太で主題歌がミスチル・・・・・って『オレンジデイズ』かよ!って思ってたら、始まって真っ先に『TBS』の大きな文字がドドンっと。あ〜なるほどTBS出資なのね。しかし、この映画、フジの食わず嫌いでも宣伝してたし、TBS以外の他局でも宣伝しまくってたように思うんですが。これはホリプロ(ブキ)とスターダスト(コウ)という超巨大事務所の看板俳優だからこそ成せる技でしょうな・・・・・・・こういう宣伝って部分でも大手事務所は強いんだよねぇ。映画でもドラマでも、ジャニーズや大手事務所のタレントが重宝される訳だわ。ワイドショーとか勝手に宣伝してくれんだもんね。ブッキーとコウたんのラブラブカップルだったら余計。2人で舞台挨拶に仲良く登場〜みたいな画をワイドショーで死ぬほど見たわ。この映画のヒットにはそういう宣伝効果も大きかったんじゃないかな。

前情報では、妻夫木聡のプロモーション的映画っていう言葉をよく目にしてたんですが、まぁ、そういう意見がやたら言われてるのは分かるわ。物凄く妻夫木聡を格好良く撮ってあるし、格好良く撮ろうという気概が十分に感じられますもの。うん、これ観たら大抵の人は「ブッキ〜かっこいいわ〜んv」ってなるんじゃないかな。これは原作でも百鬼丸が主人公で、かなり格好良く描かれていたんで、作品的に正しいんじゃないかと。この映画は主人公が格好良くないと、映画自体の土台がガラガラっと崩れてしまうと思うのよね。しかし、私はその格好良く撮られてる妻夫木君よりも、何故か柴咲コウの方に目が行きましたけどねー。柴咲コウはマンガでは子供の役というのを、無理矢理に大人にした感のある役なので、キャラ的に無理があるっていうか、ウザいキャラになってはいたんですがね。それはちょっと損な役回りになってたように思うんだけど、それでも彼女のクルクルと変わる表情に魅力を感じました。妻夫木君がスカした・・・・・おっとっと、抑えた演技だったので、彼女の激しさのおかげで逆に退屈せずに済んだかな。これって殆ど百鬼丸どろろで進んで行く話なんで、主要キャラの対比としては、いいコンビだったと思います。百鬼丸ばかりが全面に出過ぎると、感情の起伏に乏しいから、最初はカッコイイ〜〜Vvで観てられるけど、途中で飽きると思うのよね。(笑)『ハケンの品格』における篠原涼子加藤あい他脇キャラとの対比みたいなもんじゃないかな。あれは内容とか1人1人のキャラ設定はともかく、それぞれのキャラの対比においては抜群に上手いもんね。
私は柴咲コウどろろを演じるって時点で、端から原作は無き物だと考えてたんで、彼女の演じるどろろは、見るからに『女』ではあるけれども、無理矢理に男として生きようとしている女性という風に解釈したので、柴咲コウの演じるどろろの無理して頑張ってる感が逆に凄く良かったんですよね。だから、彼女につられて百鬼丸がどんどん人間臭くなっていく様も説得力あったし。この妻夫木君の百鬼丸が少しずつ変化していく様の演じ方はさすがと言いますか。だから、ラブラブバカップルとかは、まぁ、ちょい置いておいて、妻夫木&柴咲コンビは役者としてもいいコンビだな〜って思ったわ。どっちがが出れば引く・・・・・・みたいな呼吸もピッタリだと思うし。この2人だったら、また共演を観てみたいかなぁ。前にも書きましたが、この2人なら手塚治虫の『どろろ』じゃない方が良かったようには思うけどねぇ・・・・・・。どうせマンガ原作なら、高橋留美子原作の短編『るーみっくわーるど』とかはどうかしら?妻夫木君は高橋留美子が描く普通の男の子の役にピッタリ!柴咲コウの顔なんて高橋留美子の描く女の子をまんま実写化したような顔だし。あ、『人魚の森』なんかはどう?2人ともピッタリじゃん。(笑)

んで、話がズレましたが・・・・・・・・・・肝心の映画の中身はっていうと、画的にも凄く凝ってたし、雰囲気も悪くない。こう・・・・・・・・そうだな〜例を挙げると『キャシャーン』のような画面のビジュアル作りへのこだわりが感じられました。(※『キャシャーン』とは・・・・・・宇多田のダンナが道楽で作ったビジュアルとキャラクター萌へのみで構成された映画)ブキ&コウのコンビもなかなか。ちょっと説明的過ぎる部分はあれど、話の進み方も面白い。最初・・・・・・・前半から中盤にかけてぐらいは、『あれれ・・・・?結構、面白いじゃん。何で巷であんなに評判悪いの??』って感じだったんですが、中盤から話が進むに連れて、あ〜〜・・・・・・・・って。(苦笑)これはね〜〜脚本で失敗しちゃったな。

ただ、まぁ・・・・・・・『蒼き狼〜なんちゃらかんちゃら』っていう30億をドブに捨てた映画に比べたら(まだ根に持ってる)、製作費20億のこの映画はそれなりにお金を活かせてある。ちゃんと製作費も回収出来そうなぐらいにヒットしそうだしね。一緒に行ったツレ合いは「面白い面白い」と絶賛してたよ。(驚き)あんまり細部を追求しなければ、そこそこ楽しめる映画なのかな〜っと。私はそこが気になって楽しめませんでしたが、まぁ、お金返せ!なんて全然思わなかったし、そこそこの映画なんじゃないでしょうかね〜。(いい加減)





=======※以後ネタバレあり=======




まず、中盤ぐらいから、いきなりCGのクオリティーがガクンって落ちるんですよ。途中で予算削減されたか!?ってぐらいに。途中、ちょっと笑いそうになるくらいショボ!って思うCGとかがあって、そこで1ガクーン。んで、瑛太中井貴一が出て来る頃からはあれよあれよと2ガクーン、3ガクーンと・・・・・・・・・で、最後の親子喧嘩の終わり方とかはもうもう首がもげるほどガクーーーンってなりました。あんまりだあんまりだ・・・・・・・・最初の頑張りはどこにいったのか。最初が良かっただけに、中盤からの出来の悪さが余計に酷く思えましたよ。ちょっと期待しちゃったからさ。あとさ、どうでもいい事かもしれんけど、音楽が何故ラテンっぽいの?(苦笑)いや、砂地が多いからか、画面に合って無いって事はないんだけど・・・・・・・めっちゃ気になったわー。和装なのにラテン。まぁ、それはいいか。
これさ〜・・・・・・何が悪いって、中井貴一が悪いよね。あ、ゴメン、中井貴一は悪くない。(どっちだ)中井貴一が演じてたサネミツだったかムネモリだったか、そんな名前のキャラクターが悪い。思いっきりネタバレですけど、中井貴一がね、妻ブッキーの父親で、この映画で言う所のラスボスな訳ですよ。もう、主人公の父親であり仇・・・・・・・ってこのキャラが全て!みたいな設定じゃあないですか。コイツが全ての元凶なんですよ。めっちゃ悪いヤツなんですよ。だからドトン!っと構えてて欲しいのに、めっちゃ、優柔不断っちゅーのか、フッラフラフラフラ・・・・・「お前どっちじゃい!何がしたいんじゃ〜〜!!」ってイッライラしながら心の中でツッコんで観てました。コイッッツがコロッコロとその場しのぎっつーのか、やる事成す事がてんでバラバラなんで、もう腹が立って腹が立って・・・・・・・・・・やっぱね、こういう勧善懲悪の冒険活劇・・・・・・・・・・特に主人公が復讐に生きる!的なお話はその復讐の相手(しかも実の父親ときたもんだ・)・・・・・悪い方をドンっと魅力的に描いてないとダメなんですよ。徹底的に悪に描くか、悪いなりにも人間臭く描くか・・・・・・・・悪の美学と言ったらいいのかしら?悪い奴にもストンっと1本道が通ってないと。魅力的でないと。ドンっとしてないと。それがこの『どろろ』の中井貴一演ずるカネミツだかシゲモリだか(調べろ)は・・・・・・・・フラフラフラフラしやがって。最後、瑛太を生き返らせる為に魔物に獲り憑かれて変なメイクになった時は、本当にホンットーに「お前は一体何がやりたかったんじゃい!!」と叫びそうになりました。しかもそのメイク姿がちょっと面白いでやんの。笑い堪えるのに必死。死んだ息子生き返らせるって・・・・・・お前さっき簡単にサクっと嫁さん殺しとったやんけ〜〜〜!!まぁ、その嫁さん役が原田美枝子なんですが、この人もな〜。最近同じような役ばっかりだなーって。丸っきり『華麗な一族』のアレと一緒。(笑)このオカンがまた苛々させるんだわ〜〜早く鈴木京香出て来い!って思ってたらサックリ殺されましたけどね。めっちゃ意味なく。(笑)瑛太の役回りが損っていうのか・・・・・・・・・出てるだけって感じになったのが残念だな〜〜。瑛太落ち着いた雰囲気でなかなかいい演技してたのに。でも役が悪過ぎるわ、アレは。あと髪型がとてもとても変でした。まぁ、今回のは妻ブッキーが格好いい為の映画なんで。次行こ!次!!
んな感じで、中盤まではなかなか頑張ってて良かったんですが、途中からは脚本が破綻しちゃって見事に討ち死に。途中のショボいCGだってさ、話がしっかりしてたら全然目をつぶってられたのにね。あと、予算が無かったんならもっとアニメちっくにしても良かったんじゃないかな〜とか思ったり。変にリアルにしようとせずにさ。せっかく、原作の設定の美味しいとこを取り込んで、映画なりの面白さにアレンジ出来てたのにな〜勿体無い。うん、勿体無い映画だったわ。