『そのときは彼によろしく』

『そのときは彼によろしく』 ★★

製作国:日本 公開年:2007 配給:東宝 上映時間:?分
監督:平川雄一朗 原作:市川拓司 脚本:いずみ吉絋
出演: 長澤まさみ/山田孝之/塚本高史/国仲涼子/北川景子/黄川田将也/本多力/和久井映見/小日向文世/他

これは紛れもなく長澤まさみのアイドル映画であるなと。『タッチ』とか『ラフ』とか、(観てないけど)あの辺りの映画と同類項だと思って観ればそれなりに楽しんで観れるんじゃないでしょうか。しかし、純愛ラブストーリーだとか、市川拓司原作ものだとか、映画として期待するとこれでは楽しめないと思います。観客もそこまでバカじゃないでしょうし。アイドル映画ぐらいにハードル設定を下げると割と楽しんで観れる映画にはなってるかも?ぐらい。映像は綺麗だし、何より長澤まさみは綺麗だしね。長澤まさみの美しさは十分過ぎるほど出てました。故に長澤まさみファンには大変オススメ出来ます。あと、本当の物語の主人公であり、ストーリーテラーである山田孝之ファンも満足は出来るんじゃないかしら?俳優として山田君が好きならちょっと物足りないかも?ですが、いい表情してました。あ、万が一、塚本高史だけが目的で観に行こうなんて思ってたりするそこのアナタ。まず止めた方がいい。100%金返せって思うでしょう。実質、塚本君の出演時間は5分ぐらい。(驚)しかも出て来る重要性がまるでないのね。なんか塚本君出て来たーあーなんか喋ってるーあー・・・・えぇ!?終わりっ??っていうね。(苦笑)まだ、それでもそんなに出番の少ない国仲涼子のがトリプル主演ぽかったですからね。国仲ちゃんは役柄に重要性もあるし、まだそれなりに見せ場もある。長澤まさみのパセリ的扱いだけどさ。(苦笑)でも、塚本君ははっきり言って見せ場ゼロ。塚本君の役はそこらの名も知らない俳優の人がやって丁度いいぐらいの役でした。塚本君の恋人役の北川景子もそんなんだったな〜。まぁ、北川景子はまだしも、塚本君はそれが何をどうやったら『長澤まさみ山田孝之塚本高史のトリプル主演』などと言う事になるのか全くもって分からんわ!と。嘘を吐くな嘘を。こんな余計な嘘吐いて余計な反感買ってどうすんのかねー。トリプル主演なんて言わなきゃ、まだ普通に観れるものを。まぁ、そんな余計な嘘吐かなアカンのも何となく分からんでもない。あー随分と薄っぺらい映画に仕上がってしまいましたなーって。ホント、薄っぺらいってのが一番的を射た表現かも。もうちょっと作品としての良さを追求する努力があれば、仕上がりは全然違うものになっただろうに、ただただ勿体無い。役者の魅力がまるで活かせてない、悪いプロモーションムービーになってしまったなぁ。

これ、何が悪かったんだろー?って考えたら、この映画の一番の見所である長澤まさみが原因なんだろうなぁ。いや、長澤まさみは何も悪くない。長澤まさみ自身は。ただ、彼女が東宝のイチオシのスターであり、これから大スターに伸し上げていかなければならない存在だけに、その東宝が彼女主演の映画を製作してしまうと、本当に長澤まさみだけが中心になった映画になってしまうんだなぁと。まぁ、あの映画のチラシ見たら一目瞭然ですけどね。ぶっちゃけ、東宝さんは長澤まさみ以外は誰が演じてもいいんだろうよ。ま、そこは山田君、さすがにしっかりと鈍感な男を演じてましたけどね〜。しかし、あの鈍感さはちょっと問題ありまくりだわ。人として。山田君の聡史の役ってモテモテなんだけど、いまいちキャラクターとしての魅力が描かれてなかったような。鈍感なのだけは無茶苦茶鈍感に描かれてましたけどね。(笑)だから、山田君のファンなら山田君が演じてるってだけでもう十分に魅力的なんだろうけど、聡史としての魅力があんま伝わってこないのよね。せっかく山田君がいい感じに演じてるのに。山田君は声がいいよね〜。ナレーションとか凄く魅力あると思うわ。だからストーリーテラーにはピッタリかも。んで、この映画の主役である長澤まさみ。元々、長澤まさみは大好きだったのですが、ここ最近のメディアでの過剰な長澤まさみ押しにちょっと嫌気が差してて、あの甘ったるい声に苦手意識すらあったんですが、やっぱスクリーンで観る長澤まさみは魅力的でした。んで、彼女は演技もどんどんよくなってると思います。作品ごとにちゃんと成長してる。彼女ってさ、彼女自身の魅力に助けられてて、実際、女優としてはどうなの?って思ってたんですけど、今回の花梨役は成長を感じましたね。自分の年齢よりもだいぶ年齢設定の高い大人の女性というのを、声とか仕草とかで丁寧に演じてたと思います。だから、余計に、この映画が長澤まさみを中心にしてしまったのがね。心から勿体無いと思うんです。

長澤まさみが演じた花梨という女性は素性の知れない謎の女性(ま、バレバレですけどね)であるのに、花梨の事を描き過ぎてるんですよね。他とのバランスを考えると、そんなにこと細かく花梨についての描写は必要ないのに、そこの部分にかなりの時間を割いてるのね。だから、大人になった花梨と聡史の出会いから交流を描いてる前半がヤケに長く感じるんですよね。その間、間に挿入される子供時代の短いエピソード集は、短い寄せ集めでありながら、とても印象的に映し出されているのに。あ、この映画、聡史と花梨と祐司(大人になった祐史を塚本君が演じています)の子供時代の描写がとても多いんですけどね。子供時代がこの映画のメインになってると言ってもいいかも。子供時代はフラッシュバック的な感じで、色んなエピソードを短い時間で沢山見せる手法を取ってるんですが、そこは見事に無駄が無いんですよ。子役の子達の印象的な表情とか、短いセリフで上手くまとめてあるんです。だから、子供時代が凄くいいの!3人の幼馴染を演じた子達が素晴らしい演技を見せております。ホント、子供時代だけだったら、★4つぐらいあげたくなっちゃうぐらい、とてもキラキラと美しく描けてました。だから、余計に、大人編の、しかも花梨の部分が語り過ぎに感じるんです。それが、せっかくの長澤まさみの演技を潰してるように感じました。今回、仕事の関係で、会社の上司(50歳間近・男)と観に行ったんですが、その人が子供時代を演じた花梨をしきりに褒めてたんですね。彼女はいい女優になるとか云々。でもね、長澤まさみも凄く良かったんですよ。ただ、子供時代の花梨の方が要所要所で印象的に描かれてるから残り易いんですよね。私も子役の方が印象に残っちゃったなぁ。
花梨にあそこまで時間を置くなら、大人になった祐司の描写をもうちょっと足した方が良かったんではないかなー。その辺が大人編になるとすんごいバランス悪く感じるんですよ。花梨とその花梨に纏わる聡史と、聡史の父親である小日向文世以外のエピソードがすんごく駆け足で。もういっそ、この3人だけで通した方が良かったんじゃないかって思うぐらい。国仲ちゃんの美咲との関係も中途半端っつーか。塚本君の演じた祐司は画家の設定なんですけど、例えば、『●●の為に絵を描いた』という描写があったら、彼の場合は、その結果の絵しか出て来ない。それのみであとは全て説明セリフで済まされてるんですよ。絵を描いてる思いとか、その過程とかは一切無し。大人の祐史に関しては、一事が万事そんな感じで、全然描かれてないんですよね〜。まぁ、祐司は子供時代が全てで、大人になってからは何も話に絡んで来ないって、そういう役どころかもしれないんだけど、やっぱり『幼馴染3人の友情や恋を描いたラブストーリー』ってんなら、その一角である彼を、短いなら短いなりにも印象的に見せないとダメだったんじゃないでしょうか。これ、塚本君には罪は無いと思うよ。映画観てて感じましたもん。端から、大人の祐司を描く気が無いなって。(苦笑)ホント、これは観たら分かるわ。私は塚本君、好きですが、彼は今までも結構こういうどうでもいい役を演じる事が多かったので、今に始まったこっちゃないって感じなんですけど、でも、これでトリプル主演はあんまりだな〜。 トリプル主演とか言わなきゃ、あーあーいつもの事だわって納得出来んだけど。唯一、塚本君がキャスティングされて良かったって思うのは、子役の祐司と塚本君がとても似てたんですよ。顔も雰囲気も。だから、パっと大人の祐司が出て来ても、あんま違和感が無いのね。大人役の塚本君が、その子役の為にキャスティングされたってんなら、逆に分かるかもしんない。(苦笑)

私がこの映画を長澤まさみのアイドル映画の極みだと感じたのが最後のシーンですね。ここも勿論、ネタバレになるから内容は書かないんですけど、あのシーンはこの映画を映画作品としてちゃんと作りたいのなら、まぁ、あんな描写にはならないと思うんですよね。この映画を観た人だけには言いたいんですが、最後の最後、それはないだろー!ってなりませんでした?(苦笑)いや、別に現実に有り得ない事が起こってるからおかしいとかそんな事を言ってる訳じゃないんですよ。これはファンタジー映画なんだし。ラストの内容自体は私は嫌いじゃないし。でも、映画として良くしようと考えると、まぁ、あの場面をああいう演出にはしないと思うんですよね。あそこも長澤まさみを美しく撮るが為にああいう演出になってしまったのかなぁ。しかし、結果、エライ陳腐になってしまったなぁ。あれじゃ、映画の余韻もクソもないよなぁ。終わり良ければ全て良しという言葉がありますが、あの最後の「なんでやねーーん」で、せっかく良かった子供時代も飛んでしまったわ。ま、この映画はそれで合ってるのかな?逆に貫き通したって事かしらん。いや、十分、長澤まさみは美しかった!それは分かった。ただ、私はもう、長澤まさみ主演の東宝映画は観たいとは思わないでしょうなぁ。


【余談】

後日、この試写会を一緒に観た芸能界に疎い上司との会話の抜粋。

上司「昨日、偶然ワイドショーを見たら、この映画の事をやっていたよ」
私「へ〜〜それはタイムリーですね(塚本君のことかな?)」
上司「あの画家の子いたろ?あの子が凄い年上の人と結婚したって話題やってたよ」
私「ほうほう」
上司「何でも10歳以上年が離れてる女の人と結婚したらしいよ」
私「へ〜〜10歳以上も!?(面白いから否定しない)」
上司「何でも40歳ぐらいの人と結婚するらしいよ(嘘!?)」
私「それは凄いですね〜〜そんなに年上とですか!(やっぱり面白いから否定しない)」
上司「あの映画って長澤まさみと・・・・・・えーと、あの子なんだっけ?あの男の子」
私「誰のことですか?」
上司「くぼ・・・・・クボタ君だか」
私「山田君のことでしょうか?」
上司「そうそう、その子と長澤まさみが主演だろ?でも、ワイドショー見たら、あの画家の子が主役になってたよ」
私「まあ、ワイドショーですからね」
上司「あの画家の子なんてめちゃくちゃ脇役だろ?それなのに、あの子が映画の主役みたいだったよ」
私「・・・・・・・・・・・・・」


ここはどこからツッコむべきでしょうか?いや、あの画家の子も実はあれで主演なんですよ〜〜と言って、何も知らずに平和に映画を鑑賞した上司を心の底から驚かせてやった方がいいのか、いや、まずは、塚本君の嫁の年齢をちゃんと訂正しといてやれよって事からか。あ〜一体どっから。
い〜や〜〜『トリプル主演』とか何も知らずに観た人にはこう映るみたいですよ?東宝さん。あんまトリプルトリプル言わん方が良さそうよ?でも、ワイドショーがすんごい塚本君主演みたいに番宣しちゃったからねぇ・・・・・さぁて、どうなることやら。