『BABEL〜バベル』

『BABEL〜バベル』 ★★★☆

製作国:アメリカ 公開年:2007 配給:ギャガ ・コミュニケーションズ 上映時間:143分
監督:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ 脚本:ギジェルモ・アリアガ
出演: ブラッド・ピット/ケイト・ブランシェット/ガエル・ガルシア・ベルナル/役所広司/菊地凛子/二階堂智/アドリアナ・バラーザ/エル・ファニング/ネイサン・ギャンブル/ブブケ・アイト・エル・カイド/サイード・タルカーニ/ムスタファ・ラシディ/アブデルカデール・バラ/他

『BABEL』はずっと見たかった映画の1つでした。試写会に多数応募するも撃沈でなかなか観に行けずで。この映画の批評ってざっくり読んでても、見事なまでに真っ二つに分かれてたんですよね。いわゆる賛否両論ってやつですわ。良いって人は絶賛だし、悪いって人はどこがいいのかまるで分からん、みたいな。んで、これはもう、映画の出来ウンヌンより、この映画に合うか合わないか、好きか嫌いかの二者択一な映画なんだろうなぁと予想はしてましたが、本当に予想通りの映画でした。これはハッキリ好みが分かれるだろうなぁ。私はこの映画は好きですね。映画のテーマとか世界観が好きか嫌いかは置いておいて、役者の演技にしても、監督の映像センスにしても素晴らしいのは間違いない。ただ、ほんっとーーに好みはばっさりと分かれるかと思います。しかし、奇跡的にというか、似た者が揃ったのか、一緒に行った友人やツレ、私含め3人ともこの映画をとても気に入ったんですよね。レディースデイに行ったんですが、これなら正規の映画料金でも惜しくないわって思ったなぁ。2時間半って長い時間でも、観ててちーっとも飽きなかったのね。別にドッカンバッカンの爆破や、ドンパチでドンドン人が殺されるとかは無くて、割と淡々とストーリーが進むんですけども。ハラハラドキドキワクワクなんて、そういう類いの映画ではないのだけど、ずーっと映画のスクリーンに釘付けだったわ。
これはちょっと集中して観た方がいい映画でしょうね。決して難しい話じゃないんですけどね。単純とまではいかないけど、話の筋は至ってシンプル。ただ、話が三つの国に分かれてて、しかも時系列がバラバラなんで、一回でも『?』って躓くと、訳分かんなくなってついて行けなくなる可能性も。もし、まだ観てないって人に観る前に一つアドバイスをするならば、3つの国の出来事は、それぞれバラバラに考えて観た方がいいです。完全に違う話だと。時々重なる部分もあるんですが、そこは敢えて無視して、その国で起こってる別々の出来事だと、割り切って観た方がより分かり易くなると思います。あと、この映画のテーマであるバベルの塔の神話の大筋――――――人間が神に近付こうと建てた巨大なバベルの塔。その存在に怒った神は、バベルの塔を倒し、人間の世界を倒れた塔により遮断し、分かれた世界でそれぞれ違う言葉で人間が話すように世界を変えた――――――という、ざっくりとこんな話らしいんですがね?友人の受け売りなんで自信無いっす。やっぱちょっと違うかも?(笑)ま、大体、こんな話だっちゅーのを、頭に入れてた方が楽しめると思います。この『BABEL』って映画は、地球上の人間の言語が違う事で生ずる争いやすれ違いという、人間のコミュニュケーションを描いた作品なんですね。そこを踏まえて観た方が、すんなりと世界に入り込めると思います。実は私、この映画を観るまで、バベルの神話をしっかりと知らず、何故、この映画が『BABEL』というタイトルになったのか、この映画のテーマは何なのかをよく知らずに観たんですよね。あんまネタバレ知りたくなくって、良いか悪いかって大雑把な感想しか見てなかったの。ま、結果、知らなくても十分楽しめたんだけど、頭の中でモヤモヤーっと霞みのようなものが掛かってると言うのか、この映画が分かるようで、分からない、何とも、もやもやした感じがしたんですけど、帰りの道で友人にバベルの塔の神話を教えて貰って、この映画がはっきりと見えたんですよ。そりゃ、もう、サ〜〜って霧が晴れるみたいに。あ〜〜なるほど、そういう事かと。ま、先にあれこれ先入観を持って観るのは、映画を観る事においてはあまり良い事とは言えない事なのかもしれませんが、この映画はタイトルが『BABEL』という時点で、監督はある程度のサインを観る側に送ってるんですよね。だから、頭の隅に置いてた方がやっぱ観易いんじゃないかと。つか、もしかしてバベルの塔の神話って大体の人が知ってるのかな?知らない方がおかしいのか。(苦笑)ちなみに『バビル2世』なら知っておりますが。2番だって歌えます。コンピューターに〜かく(略)

この映画、アカデミー賞グラミー賞助演女優賞菊地凛子がノミネートされた事で話題になりましたよね。私もまずそれでこの映画を知ったと思います。あ、でも最初に知ったのは、ブラピの映画に役所広司が出るって事で話題になったんだっけかな。ま、そんだけリンコキクーチで話題になった分、捻くれ者な私としては、「本当にそんなに凄い演技なのか〜〜?」みたいなナナメな見方をしちゃう訳ですよ。どうも、宣伝に煽られてるだけで、実態は大した事ないんじゃないかって。しかしですね、それがですね・・・・・・・・・・良かったよ、菊池凛子。うん、本当にいい演技だと思うわ。映画はモロッコとメキシコと日本に舞台が分かれてるんだけど、日本のエピソードの主役は菊地凛子でした。だから助演ってよりは主演のようにも感じたかな?オムニバス映画でいう所の短編の一つの主役って感じ。他の国の俳優、ブラッド・ピットケイト・ブランシェットも、ガブリル・ベルナル・ガブリエル(何も見ないで書いた・正解はガエル・ガルシア・ベルナル。ベルナルは合ってた・笑)も良かったんだけど、この映画では菊池凛子が一番印象に残るかなぁ?日本のエピソードが他の国とあんまり絡まりが無いだけに、余計に浮き上がって見えるから、目立つのかもしんない。でも、すっごい良かったわ。ノミネートも納得でした。役所さんはいつもの役所さんでしたけどね。面白みは無いけど、あんなどっしりとした存在感のある役者ってそうはいないしね。出て来ただけで空気が変わるのって役所広司ぐらいだろうし。あと、どうでもいい話なんですが、日本のエピソードの中に出て来る刑事の役で渡部篤郎にソックリな俳優が出てまして、出て来る度に、「ハッ!渡部篤郎がバベルに!!」と思って、そして、喋り方が全然違うので我に返る・・・・・・・・という工程を3回ぐらい繰り返しました。あれはとてもとても紛らわしい。似過ぎてると思うなぁ。あ、その人が最近、車のCMに出てるんだけど、そのCMではそこまで渡部篤郎じゃないんだな。やっぱあのトレンチコートが『ケイゾク』の真山刑事を彷彿とさせるのか・・・・・『バベル』観るまでは、今まで見た事ない俳優さんでしたが、誰なんだろ?2日ぐらい泣きまくって目が腫れた渡部篤郎って感じ。この映画、ブラピとかケイト・ブランシェットとか役所さんみたいな有名な俳優よりも、菊地凛子を含めた無名の俳優さん(つっても有名なのかもしんないけど、私は全然知りません)の方が印象に残る役をしてたと思います。ブラピの家の乳母役のおばさんとか、モロッコの変態の弟(笑)とかね。いや、この弟が凄くいい演技するんだわ〜。ムカつくんだけど。あと菊地凛子の友人役の女の子も凄く良かったわ!彼女、本当に自然で良かったなぁ。

ストーリーとしては、決してすっきりするラストではないし、時には救いも無いので、最初に書いたように好みはかなり分かれると思います。嫌いな人はとことんダメかと。勧善懲悪モノで、きっちりと話が終わってないと嫌!みたいな人には決してオススメは出来ません。ただ、難しい映画ではないし、バラバラな話が交錯する割には分かり易い作品になってるので、そんなに敷居の高い映画では無いです。後味も悪くないし、私は好きですね。ただ、公開直前に、映画を見て気分が悪くなったってニュースが流れてたでしょ?あれ、私も知ってて、見る時にその問題のシーンって分かるかなぁ?って思いながら見てたんだけど、一発で分かりました。あれはそういう機能の弱い人でなくても、ちょっと気持ち悪くなるかも?(苦笑)あの演出の意図は十分分かるんだけど、もうちょっと抑えられなかったもんか・・・・・・・・・と思います。さすがに、視覚的に観る人の目や頭を混乱させるようなのは頂けないんじゃないかって。そこはちょっと引っ掛かりましたけどね。良い映画でした。私は好き。何年か先にもう1回観たいかも。