最近観た映画。

色々と観てるんだけどな〜取り合えず試写で観た映画は上映より前に。

『スマイル〜聖夜の奇跡』 ★★★☆

この映画、良かったです。是非、親子連れで観て欲しいな。これは子供に向けて宣伝した方が良さそうな気がします。子供向けっていうのとはちょっと違うけど、何か沢山の子供に観て欲しいなって思いました。

好きこそ物の上手なれという言葉があります。この映画を観てそんな言葉が頭に浮かびました。芸術は人が創るもの。人には心がある。心意気さえ伝われば形がどうであれ感動出来るもんだなって。
第2回陣内孝則監督作品である今作品は、ありとあらゆる理屈を跳ね返す力がありました。陣内さんがメガホンを取るのは今回で2回目なんだけど、やっぱり本業でないだけに拙さも目立つし相変わらず余計な演出も多い。それでも初監督作の『ロッカーズ』に比べたら随分とこなれた画面作りになってたんですが、かといって監督としての才能を感じるかというと、演出は古さを感じるし、画作りもごくごく平凡。映像としての拘りはあまり感じません。ただ、この映画は紛れもなく映画であると。この監督は「これが撮りたい」という情熱だけで作品を作ってると感じました。自分の作りたい物に対して妥協してないし、縛られてない。これが監督として作品を作る上で物凄く大事な事だと改めて分かったわ。悲しいかな、こういう拘りを持って映画を作る事がどんどんやり難くなってるのが日本の現状。作品の多くはキャスト優先で、しかもそこには事務所がどうのと政治的な事が絡んでいて。作りたい物を作りたいままに作るという当たり前の事が難しくなってるんですよね。ああ嘆かわしい。今作の陣内孝則だって『陣内孝則』っていう芸能人としての力があるから、ある程度妥協せずに作品を作れたんだと思うけど、これがそこらのテレビ局の雇われ監督だったらそうはいかない。ドラマ演出の人が映画の監督をするのを悪いとは言わないけど、大抵、上の都合の良いままに仕事をこなすだけの監督とは名ばかりのただ仕事をするだけの人が多いのも事実。皮肉な事にそんな事が本来は監督ではない俳優・陣内孝則の監督作品で浮き彫りになったような。物を創るのには情熱が一番大事なんだなー。
話を映画に戻すと、この映画は少年アイスホッケーが題材です。ダメダメなアイスホッケーチームを、ひょんなことからルールを全く知らないド素人が監督を引き受ける事になった事がきっかけで、あれよあれよとどんどんと力をつけチームが勝利していくという、何ともまぁ、あらすじにするとベタな話。しかもそこに白血病の少女まで付いてくるという、コントみたいなベタベタなストーリーなんですわ。監督役には森山未來、その恋人に加藤ローサ。その他、少年アイスホッケーチームのメンバーがメインで話が進んで行くんですが・・・・・・このベタベタな話が新鮮に思えるぐらいにアイスホッケーチームの子供達がフレッシュで良い演技をしてるんですよね。聞けば彼らはアイスホッケーが得意というだけの素人をオーディションで選んだという。殆どが演技経験ゼロの子供達。まぁ、思い切った事をしたなぁって。こんな冒険、なかなか出来るもんじゃないなと。この映画はアイスホッケーが題材なんで、それが出来ないと話にならないんですが、このアイスホッケーってのは素人目に見ても敷居が高いスポーツであり、ズブの素人が一週間や二週間練習したところでそうそう出来るもんじゃないと思うんですよね。しかし、この映画はアイスホッケーの経験者ばかりを集めてるので体の動きが全然違うのね。凄くスピーディーで迫力あるんですよね。そんな演技未経験の子供達がごくごく自然に演技を出来た事でこの映画は80%は成功したようなもんだったんじゃないかな。子供達の中のメインの男の子が小学生とは思えない大人びた格好良さで目の保養になるのも嬉しい所。そしてその彼が恋する白血病の女の子が可愛い可愛い!よ〜こんな可愛い子見つけてきたなー陣内監督って感心するぐらい可愛らしい。彼女の友達の男勝りな女の子も可愛いし、他のアイスホッケーチームの男の子もそれぞれキャラが立ってて良いんですよ。どの子供達も自然に演技してるから引っ掛かりもないし、本当、陣内さん、よくぞここまで子供達を魅力的に撮れたなって。
で、その子供達も素晴らしかったんですが、この映画の主演である森山未來も凄く良かったんですよ。この映画の森山未來はリスペクト陣内孝則っつーぐらいトレンディードラマの頃、往年の陣内孝則を彷彿とさせるようなハッチャケ演技で面白いんだけど、森山未來は全然暑苦しくないのね。それが森山未來の演技プランなのかキャラクター性なのか、一歩間違えると大変ウザいキャラになんのに、良い感じにサラリと演じてる。でもちゃんと熱さは感じるの。あー森山未來すげーな、と素直に感心しました。で、主役に森山未來を起用した最大の理由であるタップダンスも良かった!体に踊りが染み着いてる感じがね。あれはポッと練習した人間がやったってあそこまでの説得力は無いだろうなって。だからね、アイスホッケーの子供達にしても、森山未來にしても、その役を演ずるのにこの時期に一番最適な人をちゃんと選んでるなって映画を観て感じられたのね。陣内さん、妥協しなかったなーって。監督が情熱を持って映画を作り、キャスティングにも妥協しなかった時点でこの映画は99%は出来上がったようなもんだったんじゃないかって。実際、この映画はその辺の成功により、元々の地力の2割増ぐらい良くなってると思います。特に素人が多い子供達は作り物でない自然の相乗効果ってあったんじゃないかな。
まぁ、かなり褒めましたが先に書いたんですけど、余計な演出も多いんですよね。笑えない寒いギャグも多いし、キャラクターへのピントがぶれてるっつーか、絞り切れてなくて散漫に感じる事も。エピソードが多過ぎて収束し切れてないのも少し気になった。でも、それを覆って余るぐらいに力強いんですよね。監督の熱気、キャストの真摯さが画面に満ち溢れてるから細かい事など圧倒されちゃうんだよね。
森山未來以外の大人キャストも皆良い味だしてましたよ。加藤ローサはとにかく可愛らしいし、他の大人キャストも締めるとこでビシッと締めてたし。森久美子の使い方なんてそうきたかーって感心しちゃう。デニーロも卑怯(笑)あと豪華友情出演はエキストラみたいな出番の人やバッチリ出てる人まで様々。塚本高史はあんな出方でいーのかってぐらいちょびっとだし、玉木宏もあんなアホな出方で・・・・と贅沢っちゃ贅沢だし、大多数は別にこの人でなくても・・・・・みたいな出演なんだけど、それも遊び心だと思えば笑えるかな。陣内さんの交友関係の広さがよく分かるなと。そんな芸能界で顔が広い陣内孝則だからこそ、こんなにも自由に熱い映画が撮れたんだろうな。これが幾ら力のある監督だからって、そんなに自由には出来ないのが、今の日本の芸能界の現状だろうね。陣内さんみたいな人が居て良かったよ。

陣内さんは前回の『ロッカーズ』では自身の自伝的物語を撮り、今回は息子が情熱を注ぐアイスホッケーを少しでも多くの人に知って貰おうとメガホンを撮ったという、完全に自分の興味のある情熱を注げる題材だけに絞って映画を作ってるのね。陣内さんはこれでいいと思う。変に欲を出して映画として評価されようとかって作ったら面白い作品は作れないと思います。だからね、次回作も陣内さんが物凄く興味持ってる題材で、好きなように作るんだったら、どんな題材だろうと、キャストだろうと観たいなって思いました。

なかなかいいですよ、オススメ。