『アウトレイジ』

ここの所、酷く体調が不調だったんですが、体を引き摺って試写で観ました。体調悪い時に観る映画じゃないな、これ。(笑)明日は宇宙ショーへようこそだ〜。こういう時に限って試写が続くんだなぁ。

アウトレイジ』 ★★★☆

これはなぁ。何でカンヌのコンペに選ばれたのか。(笑)『第9地区』のアカデミーノミネート並に解せぬ・・・・・・・・だって、カンヌとは180度違うベクトルの作品だと思うもの。本当、大衆向けつーか、もっと下世話なVシネ的というか。「北野武・原点回帰」なんて言葉をよく聞きますが、原点回帰なんてとんでもない。武の原点らしき物とも180度違うベクトルの作品。勿論、昨今の『アキレスと亀』や『TAKESHI'S』とも違う、今までの北野武監督の作品とは一線を画す作品です。まぁ、軍団の水道橋博士等が言うような「最高傑作」なんてこたぁないですよ。それ言っちゃ、今までの武の作品に失礼だわ。これ比較対象外の作品ですよね。監督・北野武が感じていたジレンマを一掃する為の作品に思えました。武はこの作品を越えて、原点回帰するんじゃなかろうか。若しくは、全く違う世界に行くのか。この作品はその前の段階の憑き物落としみたいに感じましたね。
北野監督がしきりに申してるように、今作は台詞が多く、分かり易い構成です。うん、分かり易い。いや、ちょっと分かり易過ぎる。(笑)ヤクザの覇権争いの中で復讐の連鎖と裏切りが交錯しまくる作品なんだけど、プロットとしては凄く単純だし、先も読めてしまう。意外性のあるキャスティング・・・・・なんて言われてるけど、まぁ、その意外性がステレオタイプというか。まんまだからなぁ。加瀬亮なんて元々、狂気を孕んでるもの。あのメンツ並べて一番ヤバイのは普通に加瀬亮だし。キャスト=キャラはどれもそんな意外性を感じませんでした。その中で小日向文世の刑事が予定調和でありながらも、多角的に描かれてて面白かった。逆に小日向さん以外が単一的過ぎて、キャラクター造型としてみると面白味がないんですよね。で、あの人が〜この人が裏切って裏切られて〜も大体読めちゃう。プロットとしてのハラハラ感はゼロ。かなり予定調和な裏切り合いの覇権争いです。でも、これはそういう部分で楽しませる作品じゃなくって、バカな男達の『死に様博覧会』として、「この人どうやって死ぬのかしら〜?」ってそういう楽しみ方が吉かと思います。多分、そういう風に作られてる。そして、そうやって観ると最高に面白い。(笑)男達が次から次へと無駄死にしてく様は圧巻ですよー。ほぼ全員、無駄死にだもんな〜。人間なんてそんなもんさ。人が思うよりも人の死に意味なんてないのさー。
Vシネ的なんて書きましたが、それも北野武の確信犯だと思います。多分、いっぺん、こういうベッタベタな作品を作ってみたかったんだよ、監督。(笑)それが世界のキタノだとか、やたら芸術性をクローズアップされて神聖化されちゃったからタイミング逃したんだろうな〜。で、これを敢えて、豪華キャストが揃った今作にぶつけたと。だから、あのキャスト使ってこれかよ〜みたいな面白さもありますよ。あの人がこんな死に方?みたいなね。主要キャスト11人の群像劇と書いてあるけど、もっとキャラクターが沢山いて、主要キャストと変わらないぐらいに出て来るから誰が誰やらもうキャラクター多過ぎ。(笑)それでも、その主要キャストには「ここ!」って見せ場が用意されてるんだよね。それぞれ印象に残るし、でも、それぞれ印象に残らない。だって虫けらみたいに死んでくんだもーん。死んだ時に一瞬にして印象が吹き飛ぶもの。そんなもんだよ。死に様がカッコイイなんてきっと間違ってんだわ。そんなVシネヤクザな作品だけど、それでも絵が全然違うんだわ。もう、笑えるぐらい、そういった作品とは一コマ一コマの画面が一線を画してる。あのカメラワークとか演出の付け方は凄いよね。絵で十分もたせれるんだもん。今までの行間で読ませる・・・・・みたいな雰囲気がゼロになってこそ、逆に北野武の才能が際立ったかもしんない。く〜これも確信犯か?ホント演出凄い。カッコイイ。痺れる演出が随所ありました。笑える部分も一杯ありました。

暴力描写はエグいエグいと前評判でビビって心準備をしていたせいか、思ってたよりも痛々しくありませんでした。逆に痛いのが面白いなんてねぇ。かなりドSな気分になれます。ちょっと変なクセが。(笑)その辺もエンターテイメントなのかしら?