『恋文日和』

恋文日和』 ★★★☆
オムニバス映画:『わたしを知らないキミへ』『雪に咲く花』『イカルスの恋人たち』『便箋日和』全4編
製作国:日本 公開年:2004 配給:シネカノン 上映時間:111 分
原作: ジョージ朝倉 監督:大森美香/須賀大観/永田琴恵/高成麻畝子
脚本: 大森美香/佐藤善木/松田裕子/岡本貴也
出演:村川絵梨/弓削智久/真木よう子/小松彩夏/ 田中圭/田中要次/玉山鉄二/塚本高史/當山奈央/中越典子/大倉孝二/他


私の住む地域でやっと上映されたので観に行きました。なかなか評判が良いので、期待して観たんですけど、期待通りに面白かったです。
いや、面白く観れて良かった・・・・なんせ、枯れ枯れの30代女にこんな若い子達の淡い恋心なんて理解不能なんではと思ったんですけど・・・・何とかギリギリいけた。(涙)多分、青春真っ盛りのお多感なお年頃の娘さんなんかが観たら結構泣けるんじゃないかな。私が行った映画館でも泣いてる人が多かったです。
名作!とまでは言えないんだけど、良作とは言えますね。この爽やかさは味わって欲しい。観終わった後、えらい清々しい気持ちになれたもの。若返るよ!気持ちだけは。(泣)

『わたしを知らないキミへ』と『雪に咲く花』と『イカルスの恋人たち』の3編の間に『便箋日和』の短いエピソードが挟まります。珍しい構成ですよね。でも、この構成は大成功だったかも。それぞれ毛色の違う『恋愛』がショートショートストーリーの『便箋日和』のおかげで次に残らないんですよね。リセットした気持ちで観れるっていうのが良かったです。

『わたしを知らない君へ』

どの話もなかなか良かったんですが、私は大森美香監督・脚本の『わたしを知らない君へ』が一番好きかな。一番上手くまとまっていたし、実は恥ずかしながら、この一番純情な淡いラブストーリーで泣きそうになってしまったんですよ。ヒロインが屋上に繋がる階段を駆け上がる所でウルウルしてしまいました。あんな場面で泣けるって私、実はかなりの乙女なんでは・・・・と大間違いな勘違いをしてしまいました。アイタ。いや、大森美香の盛り上げ方が上手いんだと思いますよ。でも、あそこの盛り上がりの後が意外と呆気無くって尾を引かないのが、また良かったかな。
主演の2人、村川絵梨弓削智久も役にハマってて良かったしね。特に村川絵梨の演技は自然で好きだな。彼女のおかげでこんなオバハンでもドキドキ出来たんだと思います。弓削君はあまりに原作のまんまで驚きました。マンガから抜け出てきたくらいソックリだった。(笑)あれは原作ファンの人は嬉しいだろうなぁ。あと、『パッチギ!』のイカした姐御の真木よう子が『パッチギ!』とは全く違う清楚なお嬢さん役で出てきたのが嬉しかったです。凄いギャップ。(笑)彼女、本当に綺麗ですねー。
大森美香は映画でも良い仕事してますよ。ドラマから映画に舞台を変えても、彼女独特の可愛らしさは失ってなかったです。物凄く大森美香っぽいシーンがあったんですが、あれは原作にあんのかな?あの公園での出来事って。原作読んだのにちゃんと覚えてないんですね。まんが喫茶で流し読みしたから。(笑)もし、あのシーンが原作にあるのなら、監督と原作の相性が凄く良かったんだと思うなぁ。
しかし、この可愛さを何故『不機嫌なジーン』で出来ないのか・・・・美香ちゃんよぅ。

『雪に咲く花』

ブリスター!』の須賀大観監督って事でこの作品にも注目してたんですが、これは難しい映画だったかな・・・・・・。ちょっと、25分やそこらの時間で扱う題材では無かったような。須賀監督の映像が一番綺麗だっただけに勿体無いんですよね。せめて、1時間ぐらいの長さで観たかったかも。田舎特有の閉塞感が深く描かれていたら、もっと主人公2人に共感出来ただろうと思うんですよね。惜しい。
田中圭君は『ウォーターボーイズ』とは全く違う雰囲気で、でも、これが普段の田中君?と思えるぐらいにむっちゃナチュラルでした。ナチュラルに格好良いの。この映画で一番オトコマエなのは間違いなく田中圭君と田中圭君が演じた男の子ですね。小松彩夏ちゃんも美少女っぷりがハマってて良かったね。かなりの棒読みだけど、この役では気にならなかった。
いや〜惜しいなぁ、この作品は。だって本来なら、これが一番私好みの作品だったからです。2人で服を着たまま、お風呂に浸かるシーンなんて物凄く好きなんだけどなぁ。あの時の田中君の目線がこれまた良いんですよ。絶品。
場面、場面はこの作品が一番印象に残ってます。

イカルスの恋人たち』

この話が一番泣けるって人が多いんじゃないかな?私は残念ながら原作の方が数倍泣けたんですけどねー。最後の部分にはちょっとうるっとなったんですけど・・・・これも惜しいんだよね。やっぱ、時間が足りないように思いました。題材がかなり多面的で面白かったので、いっそこれ1本で長編映画にしたらなかなか面白い作品になったんじゃないかしら?ほら、『ジョゼと虎と魚たち』みたいに短編を長編の映画にするみたいなね。色んな要素を広げられる話でした。
塚本君は原作のキャラにかなり近いです。ハマってました。弓削君には負けるけど。(笑)ちょっと屈折したイマドキの若者ってキャラにはピッタリだよね。ピッタリ過ぎるから、評価し辛いけど、良い演技してましたよ。まさか塚本君に泣かされそうになるとはね。ハマり役の塚本君とは逆に危惧してたのが玉山鉄二君。頑張ってたんだけど、短編であのキャラクターを演じるにはやっぱり玉山君じゃ無理があったかな。原作の兄は吹越満を若くしたようなビジュアルですっごい気持ち悪いー嫌ーな奴なんですよ。(笑)その兄の意外な面を知るっていうのが面白いんだけど、その辺の描写が少なかったのもなぁ。やっぱ時間足りないか。時間が一杯あれば玉山君もハマって見れたと思うんだけどね。でも、難しい役を頑張ってました。ビデオメッセージの玉山君良かったな。ユーイン役のト當山奈央が無茶苦茶歌が上手くってビックリ。って歌手なんだよね、彼女。でも、歌手だとは思えないほど演技が上手かったですよ。ただ、歌が上手過ぎて、あの場面でつい、聞き惚れてしまったのはマイナスかも。あそこはもうちょっと拙い方が心に響いたかな。

『便箋日和』

これは他3編の間にちょっとずつ挿入されて進んで行く話なので、正当な評価はし難いんだけど、なかなか良かったです。これが私のような年代の人間には一番身近に感じれる話でしたね。でも、身近だけど一番有り得なかったったかもなー。あんな女居ないって。(笑)しかも中越典子大倉孝二ベタ惚れって・・・・・・いやそれこそがリアルなのか。主演の中越典子大倉孝二の2人も他の出演者に比べると大人な感じだしね。大倉孝二がこういう映画に出て来てくれるとなんかホッとするなぁ。(笑)
中越典子が凄く可愛かったんですよー。元々、美人だとは思うんだけど、どっか意地悪そうに見える顔で好きじゃなかったんですけどね。彼女を可愛いと思ったの初めてかも。ちょっと惚れた。しかも、なかなか彼女の演技が良かったんですよ。中越典子と言えば、あの『プライド』でどんだけムカつかせてくれた事か。でも、それがぶっ飛びました。彼女、表情の演技が凄く上手い。特に切ない表情が。ホント見直した。もしかしたら大倉孝二に引っ張られたのかもしれないけどね。受身の演技が上手い人だし。人を引き立てて、自分も魅力的に演じれる人だよね。
『便箋日和』の終わり方が凄い好きです。あそこは大倉孝二ならではかと。(笑)だから、この話が一番最後に終わってくれたおかげで、映画の後味が凄く良いものになりました。



最初軽くフワっとした感じで始まって、中盤は少し重く、でも、最後はやっぱりするっと力が抜けるような軽い気持ちになれる。一遍一遍の順番も良かったな。最後が『便箋日和』で良かった良かった。
これはレンタルでいいから観て欲しい作品ですね。まだ地方では上映してる所があるんで、観れる人は映画館で観て欲しいけど。いつ頃発売なのかな?