『菊次郎とさき』 第5話。

見終わった後、なるほど、そういう事かぁ・・・・と妙な納得が出来ました。色んな疑問に対する答えが全て詰まってたナァ。
まー誰しもが『菊次郎とさき』で塚本君が北野武を演じるって点が???だったと思いますよ。私もそれが最大の疑問だったんですけど、青年編が始まった途端、疑問を持ってた事自体が吹っ飛んだというか・・・・・・。頭に残ってた本物の『北野武』『ビートたけし』が居なくなってしまったんですよ。残ったのは『菊次郎とさき』の北野武青年でした。これは見事にヤラレタ!って思いましたね。よーく考えると当り前な事なんだけど、今、第一線で活躍してる人(しかもメディアに出まくってる)意識しても、ただのモノマネっつーか、偽物にしかなんないんだよね。特に『菊次郎とさき』なんかは、下手したら『奇跡体験アンビリーバボー』で本物のビートたけしを見た直後にドラマを見る人だって少なくないんだから、どんなに武に雰囲気が似てても、いや似せれば似せるほど、逆に違和感があると思うんですよ。似せる事を意識し過ぎるとドラマの世界観から浮いちゃうしね。そんなら、いっそ今のビートたけし微塵も感じさせない役者を使え〜ってのは、考えてみれば、理に叶ってるなと。塚本君は見事に『ビートたけし』とは重ならないですもんね。まず、この点で深く納得。
あと、このドラマの1話の感想の時に書いたんですけど、『菊次郎とさき』の一番のテーマは『ノスタルジィ』だと思ってたんですね。実際、少年期の時は昭和らしさを画面一杯に押し出していて、それが売りだったと思うんですけど・・・・・・そこで、イマドキ風の若者の塚本高史が青年たけしを演じる事に不安があった訳ですよ。ビートたけしに似てる似てないウンヌンよりもそっちの方が私的に不安要素でした。ところが、青年期はまー見事に別なドラマになってましたよねー。別って書くと語弊があるかもしれないけど・・・・・描きたいテーマが違う物に変わっていたというか。青年編のテーマはズバリ『青春グラフティ』でしょうね。だから、画面全体も少年期ほどの昭和臭さが無くなったというか。おかげで割とイマドキっぽいままの塚本君が浮いてなかったもんね。あ、でもあのイマドキっぽいままなのは意図的なもんだと思いました。なんつーか、北野武は古さを感じさせない存在にしたいんでしょうね。だから髪型も服装も敢えて古臭くしてない。今の若い世代の人が見ても格好良く見えるように敢えて時代を感じさせないようにしてんだろうな。全年代に共感出来るように。まぁ、実際の昭和40年代も高度成長期の真っ只中で目まぐるしく文化が変わっていて、ノスタルジックさは薄まってたんでしょうけどね。
完全に青春ドラマになってた『菊次郎とさき』ですが、でも、少年期と青年期がぶっつり違うドラマになってたかっていうと、そうでもなくて、上手くシフトチェンジ出来てたように思います。青年になったたけしの塚本君も大役の平山広行君もしっかりと北野家の家族として馴染んでたしね。ずっと、菊次郎とさきとそこに住んでたような。前から平山君は格好良いのに役に恵まれないなぁと思ってたんだけど、この大お兄ちゃんは凄く良いですねー。武より美味しいかも?(笑)いやいや、それは平山君の演技がいいからですよね。真面目でしっかりしてるのに、どこかお茶目な部分もあって可愛らしいです。テレビに出てくる北野大教授とも雰囲気が微妙に被ってる所も良いし。イマドキっぽいたけしと昭和40年代にしちゃ古過ぎるビジュアルの大兄ちゃんの対比がいいですよね。面白い。


とまぁ、うだうだと講釈を書きましたが、そんなもんどうでもいいっつーぐらいに青年編は凄く面白かったですよね。いやー久し振りに見応えのある直球勝負の青春ドラマでした。少年編の出演者の殆どが居なくなっちゃったのは寂しいけど(うしばあちゃんなんて死んじゃったし;)青年編は青年編として楽しめそうですね。元々、あまりホームドラマに興味の薄い人間としては、ちょっと子供編に飽きつつあったので、刺激があったのかもしれないけど。刺激っつったら、平岩紙ちゃんが出てきたのが嬉しかった〜〜〜強烈なキャラでしたね。でも、北野家に凄く馴染んでたわ。(笑)紙ちゃんの出番はアレで終わり?寂しいよぅ。あ、でも次は荒川良々が登場か。ガダルカナル・タカ小田茜・・・・・・こ、濃いなぁ。楽しみだな。

青年編はシリアスな場面が多くなって、感情のぶつかり合うシーンも一杯あるし、役者の演技を見てるだけでも見応えありますよねー。室井滋は凄いね。本当にかぁちゃんなんだもん。かぁちゃんの怒り方だし、泣き方だし。室井滋に泣かれたら、なんか自分が親不孝してるみたいで(実際、親孝行な娘とはとても言えない・・・・)胸が苦しくなりますもん。凄いよなぁ。あのかぁちゃんは。室井さんハマリ役過ぎます。あとは菊次郎役の陣内さんだけど、あのコミカルさは陣内さんの18番だよね。でも、菊次郎の可愛さは、今まで見た陣内孝則の役に無かったような。あの可愛さが、シリアスな青年編の救いになってる部分はありますよね〜セリフの言い方が面白いし。塚本君はずーっと昔から好きだったんですけど、最近、特に感じるんですが、彼は凄い役者さんなのかもしれない。(笑)役との馴染み具合は凄いですよね。あまりに自然にドラマの中に居るから、北野武役に違和感が無いんですよね。室井さんと陣内さんの息子!って感じが凄くする。うーん、色んな役者さんがいるけど、私は塚本君の演技が一番好きだなー。塚本君の演技は本人の人柄が滲み出てるので、本人も好きって事だろうけど。菊次郎に殴られた後の笑顔は誰にも真似出来ないだろうな。あーいう笑顔が出来る純粋さを大人になっても持ってる人ってそうはいないもんね。