『グエムル〜漢江の怪物』

お先に試写会で観て来ました。私が世界で一番好きな監督と言ってもいいポン・ジュノの最新作。本当に楽しみにしていた映画です。率直に観た感想を述べると・・・・・・・・乗り切れず。もう1回観ないとちゃんと評価出来ないなぁ。凄く良く出来た映画だと思うの。ポン・ジュノらしさも出てた。でも、全体を通すと、どうも私にはしっくり来ない部分があるんですよね。別に怪物のディティールとかに不満はありません。あの怪物のCGのB級臭さもワザとだと思うのよね。動きのヨロヨロっぷりとか滑りっぷりもリアルだしね。その辺もポン・ジュノ特有の『外し』だと思うんだけど、今回、その『外し』の部分がちょっとしっくり来なかったのかなー?
日常の中のほんの少しの非日常を描いたのが『吠える犬はかまない』、非日常の中に日常を混ざり込ませてより非日常を際立たせていたのが『殺人の追憶』。どちらも、映画の中の人々がそのまんまどこかに存在するかのような緻密に造りこまれた世界が映画の中に存在していました。でも、単にリアルって言うのとちょっと違うんだよね。映画の世界が丸ごとそのままどこかで生きている感じ。今回の『グエムル』も非日常に日常を上手く取り入れてあり、ストーリーの緩急の付け方もお見事でした。突然現れた巨大生物とごく普通の人間が戦う様を、時にリアルに、時におかしく、時に物悲しく描いてあります。ポン・ジュノが描きたかったのは、怪物でもヒーローでも無い。突如現れた怪物という非日常に対して、ごく普通の日常を生きていた人間がどうやってその非日常に接していくのか。普通の人間が普通のままでどうやって『怪物』と闘うか。結局、人間の日常を描きたかったんじゃないかな〜監督は。でもさ、映画に出てくる人間達がどれも普通の性格で普通の能力だから、当然ながら怪物をなかなか倒せないの。その辺が凄くもどかしいのよね。そして、普通の人間にはそうそう易々と奇跡は起こらないんですよ。その普通だからこその残酷さ。ポン・ジュノの描きたかった物は凄く分かるんだけど、やっぱ、途中がもどかし過ぎて苛々したわ。(苦笑)なんでやねーん!って何回も何回も。心の中で『使えねぇ!』って何回叫んだ事か。ま、それでこそ普通なんだけど。そこを描きたかったんだろうけど。ホント苛々した。(笑)やっぱ、ドラマティックな物を見慣れてるせいね。毒されてるのかしら?あと、今回の映画は笑いの部分がちょっとやり過ぎに感じたんだよね。その辺も微妙にしっくり来ない要因なのかな。
役者はね〜〜もう、さすがの一言。素晴らしい!ソン・ガンホは相変わらず凄い存在感だし、ペ・ドゥナもいいし、ピョン・ヒボンも凄くいい味出してる。パク・ヘイルも『殺人の追憶』の容疑者と同じ人物と思えないダメ男を凄くうまーく演じてました。パク・ヘイルを知らない人は『殺人の追憶』の容疑者と『グエムル』のナミルと同一人物って分かんないんじゃない?って変わりっぷり。『殺人の追憶』の時のミステリアスさはゼロでした。(笑)でも、とてもキュートでしたよ。私の好きなダメ男っぷりだったわ。あと、娘役のコ・アソンが表情豊かでとても良かったです。監督が「彼女は子役でなく、女優だ」って言ってたの分かる。彼女のおかげで映画に凄く緊迫感がありましたもんね。しかし、まぁ、ポン・ジュノ監督に縁のある俳優達が出るわ出るわ・・・・・・・・・・総出演じゃない?ってぐらい、ポン・ジュノの前2作に出ていた俳優さんの殆どが出て来ましたよ。ちょい役ばっかなんだけどね。役者以外にもポン・ジュノ好きならニヤっとするシーンも一杯あります。お約束のドロップキックもありましたよ!そこでキタか〜ってニンマリね。

しかし、こうやって感想を書きながら色々と思い返してみるとやっぱり良い作品だったと思うなぁ。思い出してる今の方がドキドキしてるかも。やっぱ凄いわ、ポン・ジュノ。また、観たくなって来ました。映画が始まったらもう1回観るぞ〜!パンフも買わなきゃだし。もう1回観たら冷静に映画の良し悪しの判断が出来そう。やっぱポン・ジュノには思い入れが強過ぎるからねぇ。