『最近観た映画』

いや〜〜今年は洋画も邦画も豊作なのかもしれない。2年、3年と先まで印象に残りそうな出色の作品が多い気が。特にオススメは今回観た中では『おくりびと』と『ダークナイト』です。今年はベスト1は『ミスト』か『ぐるりのこと。』かどっちかだと思ってたんですが、その2作品を抜くかもしれない。こんなにベスト1に悩むとは、何とも贅沢な。

バットマン・ビギンズ』 ★★★☆

ダークナイト』 ★★★★☆

おくりびと』 ★★★★☆

隠し砦の三悪人』(黒澤明監督作品) ★★★

百万円と苦虫女』 ★★★☆

スカイクロラ』 ★☆

え〜〜っとまずは、金と時間返せ!と痛烈に思った押井守監督作品スカイクロラからですかね。同日に朝、『ダークナイト』を観て、昼にこの作品だったので余計にそう思ってしまったのかもしれませんが。『崖の上のポニョ』に続き、アニメ界の巨匠の作品、おまけに仲良く肩並べてカンヌにご招待〜〜されておりますが、つまんなさも同じぐらい。なのでポニョと同じ評価にさせて頂きました。そういや、同じく『アキレスと亀』で招待された北野武監督が『TVタックル』で、この2作品と一緒にカンヌに招待されたのを、「映画じゃない、アニメじゃねぇか」と一緒にするな的に苦笑してましたが、私もこの2作品と北野監督の作品を一緒に並べては気の毒に思うわ。(笑)と〜〜にかく雰囲気だけの映画なんですよね。全体的に物凄く不親切。話の中心というか、持って行きどころというか、何が何だか全然意味が分からない。そんなよく分からないストーリーが淡々と盛り上がりもなく延々と続くんですよね。拷問か。最初、この作品は『スカイクロラ』という原作を読んでないと全く理解出来ない作品なのかと思ったもん。最後まで「ギルドレ」に付いての明確な説明が無かったし。もしかしたら見せ場なのかもしれない空中戦闘シーンも全然迫力がなく、CGも浮き気味。キャラクターの表情も薄く、ストーリーも実に淡々としている・・・・と言えば聞こえがいいが、はっきり言って中身が無い。そこにきて実に淡々と喋る加瀬亮の声がより一層眠りを誘います。私がこの拷問のような退屈な映画でも眠らなかったのは単に映画代が勿体無かっっちゅー骨の髄まで沁みた貧乏性のお陰だからだけだけど、隣の連れは爆睡しておりました。2人揃って軽くエコノミー症候群。そんな貧乏性の私もDVDで観てたら、20分で寝てたでしょうね。これは観終わる前にTSUTAYAに返却してたかも。う〜〜ん、自己満足雰囲気オナニー映画って言い方がピッタリかも。とにかく不親切なんですよ。監督の頭ン中で物語が完結してるだけ。綺麗なアニメーションにも全く心惹かれませんでした。その辺、見事にポニョと一緒だよな〜〜。押井監督の『うる星やつら』、『パトレイバー』や『攻殻機動隊』は大好きなんだけど、この先生もどんどん訳分からん方向に進んでるよな〜。もちょっと、観る側の立場に立った作品を作って欲しいなと思います。しかし、『崖の上のポニョ』と『スカイクロラ』がカンヌにご招待ですか・・・・・・・・・・・・・・・・天下のカンヌ国際映画祭っつっても結局はブランドに弱いんだね〜。あ、話題の豪華声優陣ですが、と〜〜〜〜っても淡々としていた加瀬亮はキャラクターに合ってて良かったし、谷原章介栗山千明はかなり上手でした。栗山千明があんなに上手いとは意外。タニショーは役に合わせてちゃんと声の質を変えたりして小憎たらしい。(笑)しかし、肝心の主役である菊池凛子は役にも合ってないし、(多分、声優に向いてない声質)感情表現が下手くそだしで、この映画の作品の質を更に下げてたような。これはポニョと同じくテレビで放映してても二度と観ません。


ブロークバック・マウンテンは前から気になってたんですが、友人に薦められたのと、ヒース・レジャーの死がきっかけで。何とも悲しい事がきっかくになってしまったんですがね。これは観て良かったです。勿論、ヒースも良かったですけど、ジェイク・ギレンホールも凄く良かった。正に若手実力派俳優の共演という感じで、この2人だからこそ出せる空気がそこにあって、より切ない映画に仕上がったんじゃないでしょうか。まず、アメリカ西部の大自然にやられまして、ヒースとジェイク2人のラブシーンに度肝抜かれて、そっからは胸をえぐられるような痛いシーンが何度となくあり、最後まで目が離せませんでした。凄い映画だったな〜〜。色々と考えさせられるというか、後になればなるほどずどーんと来るというか。男ってどうしようもないな〜〜って思っちゃった。この映画は男の弱さを痛烈に描いてます。んで、女は強ぇな〜って。(笑)すっごい人間としての本質が描かれながらも、生き物としての本質も突いてたような。オスは弱いんだってね。男は弱いから同じ男に逃げちゃうんだろうな〜。女は強いからそれを許せないんだろうな。う〜〜ん、色々と考えさせられました。しかし、色んな意味で生々しい映画だったな〜。男2人のセックスシーンもなかなか壮絶。(笑)そこに『やおい』なんて立ち入る隙間がないほどに生々しいです。主演の2人も良かったけど、それぞれの妻役を演じた女優も良かった。ジェイクの嫁はアン・ハサウェイだったのね〜。見事な脱ぎっぷりでした。ヒースの方の嫁がすっごいリアルで良かったです。演技も見た目もね。この映画、作品内での時間の経過が激しいんだけど、若いヒース・レジャージェイク・ギレンホールは、それほど老けメイクはしてないのに見事に映画の中で歳を取ってて、そこも素晴らしいなって。この2人だからこそ撮れた映画だろうね〜。つくづくヒース・レジャーは勿体無い。これからだったのにね。


『バッドマン・ビギンズ』。これはヒース・レジャーが今更ながら気になって、新作『ダークナイト』が観たいが為だけに観たんですが、面白かったです。バットマンシリーズに全く興味無かったんですが、もし、これを先に観てたら、ヒースとか関係なく今回の続編を楽しみにしてただろうなって。今まで、ティム・バートンバットマンも観た事ないし、その他も勿論観た事ない。コミックも知らない。バットマンに全く興味が無かったんですが、この映画のバットマンはいい感じにリアルで、リアルなんだけど、ヒーロー物としても上手く踏襲してあって、そのバランスが絶妙なんですよ。単純にアクション物として観ても、肉弾戦からカーアクション等々色々と楽しめるし。主役のクリスチャン・ベール演ずるブルース・ウェインも超セレブの大富豪という世間離れした設定でありながらも凄く人間味があるし、良い意味でヒーロー然としてなくて。スパイダーマンのトビー・マグワイヤと同じように、完全なる正義のヒーローとしては描かれてなく、その不完全な部分が共感し易く、ヒーロー物にあまり興味のない人間にも面白く観れるのかも。特に『バットマン』って・・・・・って思ってる人に観て欲しいかな。私がそうだから。(笑)クリストファー・ノーランのこのシリーズは出演俳優が端役に至るまで有名で尚且つ実力のある俳優ばかり。その中に名を連ねる事が出来た渡辺謙はなかなか凄いんじゃなかろうか〜〜と今更ながらに思ったり。イカれてないゲイリー・オールドマンもいいです。途中で裏切るんじゃねぇか、実はコイツが悪の黒幕なんじゃねぇかと、良い意味でミスリードにもなってて。(笑)そして、師匠と言えばこの人、リーアム・ニーソン。何度目だ。ただ、この映画、ヒーロー物の割には悪役に魅力が無いんですよね〜〜〜そこが勿体無かったかな。こういうヒーロー物って敵対するキャラクターで映画としての面白さが決まるというか。そこは続編の『ダークナイト』で見事に立証してくれたんですけどね。まぁ、この映画は言わば序章かな。あ、でも、スケアクロウは良かったね。『28日後...』、『プルートで朝食を』の若手実力派・キリアン・マーフィ。監督のお気に入りなのかな?『ダークナイト』にもチラリと出てきました。男前なんだけどヌルっとしててインパクトのある顔だよね〜。しかし、キリアン・マーフィって他の映画では主役級なのに、こんな脇役で出すなんて贅沢だよね〜。まぁ、少ない出演ながらにかなりインパクトあったんだけど。


はい、そして続編。ダークナイトです。ヤラれてしまいました・・・・・・・・・完全降伏です。ハリウッドすげぇな〜〜〜。何だかんだ言って凄いわ。これはハリウッドでしか作れない映画。そんな正しいハリウッド映画でありながら、今までの所謂ハリウッド映画とは一線を画してるというか。アクションヒーロー物でこんな作品が作れるのかと唸らされました。あ〜〜ビックリした。すっごい衝撃だった。これは劇場であと3回ぐらい観たいな。(笑)しかし、日本では大ヒットしなさそう・・・・・・・・・・・?ウソーン。しょ〜もない映画がブランドだけでヒットして、この映画がヒットしないなんて、何だか悲しいなぁ。早く2回目観に行かないと終わっちゃうかな?劇場で観なきゃ損だしな〜〜せめて松竹系の映画館ではロングラン上映して欲しい。きっと口コミで話題呼んでじわじわ動員を上げて行けそうに思うんだけどな。ほんと、すっごい映画だよ〜〜〜行こうか行くまいか悩んでる人は絶対行った方がいい。2時間半全く長く感じません。めちゃめちゃ濃い〜〜です。まず最初の銀行強盗のシーンで観客のハートをガッチリキャッチですよ。あんな緊迫感のある銀行強盗のシーン初めて観たわ。ここでちょこっと出てるのがウィリアム・フィクナーだったりして。ま〜贅沢贅沢。んで、この映画を観に行くきっかけになったヒース・レジャーのジョーカーはやっぱり凄く良かったです。彼が急逝しなくっても、十分に彼の演技は評価されたんじゃないでしょうか。逆に死んでしまった事で、彼のジョーカーが正確に評価されないんじゃないかって心配だったり。この映画、ジョーカーが全てというか、監督がやりたかった世界をジョーカーに全て凝縮してるんですよね。ジョーカーで映画が動いてるんです。その映画の象徴でもあるジョーカーを、もしかしたら監督の要求以上に魅力的にしたのがヒース・レジャー。あ〜〜〜本当に勿体無さ過ぎる。でも、遺作がこの映画なのがせめてもの救いでしょうか。これで名実ともにヒース・レジャーの名前が世界に轟いた訳ですからね。ヒース以外の他の役者も一分の隙もなく豪華で実力派。ヒースばかりが評価されがちだけど、悲劇のヒーローのアーロン・エッカートもすごーく良かったし、勿論、主演のクリスチャン・ベールも良い。クリスチャン・ベールはこの映画観たら私生活なぞど〜でも良いわって思えるよ。ビギンズでヒロインだったケイティ・ホームズが降板して代役になったマギー・ギレンホールジェイク・ギレンホールのお姉さん)も良かった。アメリカのコミック物では主役が恋する相手というのはあまり容姿端麗ではないのがデフォなんでしょうか?(笑)しかも、2人の男の間で揺れ動くという女に反感買いまくりのキャラってのが。でもマギー・ギレンホールのおかげであんま不快には感じなかったな。正直、ケイティが降板してくれて良かったかも。あとはいぶし銀のマイケル・ケインモーガン・フリーマン。この2人はこの映画での良心というか、絶対的に信頼出来る人物で、彼らが出て来るとホッと出来るオアシス的存在で、物凄く重要なポジションなんですよ。大物俳優はこうやって使うんだよ〜って見本みたいな使い方ですわ。まぁ、この映画、語ろうとと思ったら2時間でも3時間でも熱く語れそうなんですが、とにかく観ろ!と。ハリウッドもまだまだ捨てたもんじゃない。そしてこういう映画がちゃんと評価され大ヒットするアメリカには敵わないんだな。ここ最近の日本での洋画&邦画の大ヒット作って良作は殆どないもんね。記録的なヒットに関してはどちらかと言えば駄作が多いかも。それでもメディアに躍らされて観に行くんだよな〜。宣伝したモン勝ちかい。ドラマといい映画といい、ああ悲しい現状。


隠し砦の三悪人・・・・・・これは黒澤明版のです。ラストプリンセスどうたらとかではありません。これ観て思ったのが、「何でこの映画をリメイク?しかも松潤で???」と。甚だ疑問だらけでございます。もし、松本潤を主役にするんなら、黒澤映画でも他に無かったんかい・・・・・・と。東宝の行き詰まりを感じました。何もよりによってこの映画でなくても。まぁ、あちらのリメイクは、「リボーン」だとか何だとか言って、大胆なアレンジをしてるそうなんですがね。怖い物見たさで逆に観たくなりました。ラスプリ。(こんな略語があるかは知りません)んで、まぁ、黒澤版・・・・・・・・・・・・・・正直、初めて黒澤作品で外れだと思いました。単純にワクワクしないんだな。黒澤監督の凄いトコって先駆者的に斬新な手法を幾つも取り入れてる所なんですが、それが40年も50年も経った今、黒澤監督が発明した手法は当たり前に皆に取り入れられてて、それが当たり前になってる訳です。それでも、色褪せない面白さがあるんですよね。何だろ?本気具合なんだろうか。映画そのものの躍動感っつーのかね〜。で、この『隠し砦の三悪人』は確かにアクションも凄いし、凄い演出もあるんだけど、何だか面白くない。三船敏郎なんて命張ったアクションしてるけどね〜。主役の農民の2人のキャラもいかにも小物然として、小心者でずるく頭が悪く・・・・・とおよそ主役とは思えない小物ぶりでそれも良かったんだけどなぁ。なんか最後までちぐはぐだったな〜。所々は良いシーンがあるんだけど、一体感がないというか。雪姫役の上原美佐の金切り声はかなりのマイナスポイントだよね〜。雪姫がオシを演ずる設定って彼女の演技があまりに酷いからじゃないだろうか。はてさてリボーン版はどんな作品になってるのやら。DVDになったら確認してみますわ。


蒼井優主演の百万円と苦虫女。予想通り〜の映画です。この映画を観たい!って思う人の期待を全く裏切らない映画になっております。邦画特有の穏やかで淡々とした空気、それでいて退屈しない作りになっているのがこの映画の良い所。スクリーンで観る蒼井優はやはり良いですな。彼女の存在感を存分に生かした映画になってます。んで、森山未來が良かったんだよ〜。こう・・・・・・・そんなに顔はカッコよくないのに(ごめん)、めちゃめちゃ女にモテそうな雰囲気とか。あ〜カッコイイな〜って。この映画の森山未來は無茶苦茶かっこいい。他の俳優達もそれぞれ良かったです。ただ、終盤の方は変わった事をしようとして逆に凡庸になってしまっててそこは勿体無かったかな。そこが残念ではあるけど、普通にオススメ出来る映画です。蒼井優ファンなら必見だし、絶対DVD買うべき。森山未來ファンもね。


おくりびと。これは9月13日ロードショーなんで1ヶ月以上先に観る事が出来たんですが、物凄く良かったです。また金出してもう一回スクリーンで観たい!面白かったー。観る前、モックンが葬儀屋っぽいのする〜ぐらいの適当な情報でしか知らなかったし、予告も観た事なかったんですよ。映画観た後に公式サイトで予告観たら最後に『早くも今年一番の声!』みたいな煽り文句が書かれてたんだけど、この映画を観たらその言葉も納得。確かに邦画では今年一番かもしんない。(笑)ただ、私の場合、予告を観てなかったのが良かったかもしれません。公式の予告編は結構映画の内容が深く反映されてるんで、観たら話が分かっちゃうかも?それでも良い作品だと思える自信はあるんですがね。話の展開がおおよそ掴めたとしても十分楽しめると思います。予告編はネタバレが多いけど、ちゃんと映画を観たくなるように作られてるし。地味な映画だから予告編で目を引かなきゃね。先に、モックンが葬儀屋なんて乱暴な書き方をしましたが、実際は違います。納棺師という職業で、死人を棺に入れる際の準備をする仕事です。着物を着せ替えたり、化粧をしたり。映画の中では納棺師がどこまでのどんな仕事を全般にするか、そこまで明確には描かれてなかったんですが、死者の黄泉の国への旅立ちを手助けする大事な職業のようです。そんな仕事なので、作業にも儀式的な決まりがあり、その手順がじっくり描かれてるんですが・・・・・・・・・その所作が美しいのなんの。思わず見惚れてしまいますよ。モックンの師匠的な納棺師を山崎努がやるんだけど、これまたカッコ良いんだわー。いいよいいよー山崎努。ピッタリだった。んで、本木雅弘がまぁ〜綺麗だし、カッコ良いし、モックンのPVとしても完璧な映画。(笑)いやいやそんだけ主役が魅力的でモックンが良い演技してるんですよ。モックンはこの映画で色んな映画賞取れるんじゃないかしら。この映画自体もね。私の中じゃ、リリー・フランキーかモックンだな〜。モックンがチェロ弾くシーンがあるんだけど、本当に弾いてるor見事な当て振りかよく分かんないんだけど優雅なんだわー。納棺師にしてもチェロにしても一つ一つの所作がとても綺麗。モックンならではだろうね〜。モックンの嫁が広末涼子なんですが、彼女も良かったです。モックンって実年齢は42歳だけど、10歳ぐらい若く見えるからね〜。この映画での役どころもそのぐらいの年代じゃないかな?本木雅弘広末涼子の並びはなかなかバランスが良かったです。広末涼子はめちゃめちゃ可愛らしいしねぇ。あと、余貴美子笹野高史吉行和子杉本哲太とみーんな良い仕事してました。笹野高史はズルいよね。(笑)監督の滝田洋二郎は、とても映画らしく、丁寧に丁寧に撮ってるのが画面からも伝わって来て、この監督はこういう映画が撮りたかったんだろうな〜ってしみじみ感じました。死を題材に取り上げながらも、とてもユーモアに満ちてて、何でもないシーンで涙が出てしまう。そういう映画です。地味な題材で地味なキャスト(私は豪華と思いますが)、この映画がヒットするとしたら口コミしかないな〜?松竹の宣伝方式、内容の良い映画は試写会をバンバンやってジワジワ口コミを狙う作戦をやってるようで、やたらとこの映画の試写の応募を見ますが、少しでも気になる方は応募してみてはいかが?映画をヒットさせるのはそういう小さな事からかも。私はロードショーされたらお金払ってもう一回観ようと思ってます。オススメです。


そんな訳で、『おくりびと』と『ダークナイト』は超オススメです。是非、スクリーンで観て欲しいな。