最近観た映画。

今年は映画の豊作の年かもしれない。つっても、私が観てる映画なんてほんの一握りなんでしょうが、良い映画が多いと思います。自分の好みに合ってるだけかな?(笑)

『イエスタデイズ』 ★★★☆

ハッピーフライト』 ★★★


まずは矢口史靖監督作品ハッピーフライトから。一足先に試写で観ました。飛行機を飛ばす人達のお話。飛行機を飛ばすっていっても、今まで割りと描かれていたパイロットやキャビンアテンダント(CA)、乗客だけではなく、空港の中の案内役に管制塔の面々、飛行機の整備人達、飛行の邪魔をする鳥を追い払う人に至るまで多種多様な人々が出て来ます。これはな〜〜〜〜〜いや〜〜〜悪かない。きっちり笑ったし話もちゃんと出来てた。でも、何だろうなぁ・・・・・・こう・・・・・・・・ワクワクしないというのかね。矢口史靖の映画から若さと青春を抜くと、結構、冷静な目で観ちゃってね。いまいちパンチに欠けるっつーのか、笑ったらそれで終わりで余韻が残らないのよ。矢口監督の映画って青春の眩しさやキラキラがあってこそ、安心してコテコテギャグを笑い飛ばせるんだよねー。今回はそこの部分がないので、何となく、味気ない感じで印象が薄い映画になっちゃってるのね。話は良く出来てるし、沢山の個性的なキャラクターを色んな視点から見せて、ごちゃごちゃしないのは、さすが矢口監督の手腕と言えるんだけど。あれだけひっきりなしにあちこちに場面転換しても大筋にブレがないのはお見事です。役者も田辺誠一時任三郎は何の心配も要らないし、何といっても綾瀬はるか。『THE マジックアワー』も良かったけど、彼女のコメディエンヌぶりにはちょっと注目ですぞ。笑いの間が素晴らしいというか、あれは天性の物じゃないかなぁ。彼女が何かするだけで笑えるのね。まぁ、そういう役回りでもあるんだけどさ。やっぱ可愛いし。(これ重要)他に田畑智子平岩紙岸辺一徳笹野高史寺島しのぶベンガル等々・・・・・・・・渋いとこで田中哲司江口のりこ、菅原大吉とかさ。もう、このキャストだけでお腹一杯になるぐらい、並んでるだけで楽しいメンツ。多分、彼らを並べただけの写真でも笑えると思います。あ、『運命じゃない人』の主演も出てた!・・・・・・えっと・・・・・・名前は・・・・・・・・(笑)最近、しょっちゅう顔を見るのに、一向に俳優としての名前を覚えられないのは名バイプレイヤー所以か。あ、フランク・シナトラの主題歌は合ってたな〜。
この映画、航空会社のANAが全面的に協力してまして。映画も航空会社がバックアップしてなきゃとても撮れんなーっていうぐらい飛行機を取り巻く環境の細部が描かれてました。まぁ、映画なんで、盛り上がる為に、当然、何かしらトラブルが起こる訳ですよ。やはり、飛行機にトラブルが起こりまして。予告通りに墜落すんの?大丈夫なの?みたいな話にまで発展しちゃうんですが、そんなのANA側にとってマイナスになんないのか〜?と観る前には余計なお世話的に考えてたんですが、これは観て納得。ANA勝利。これほど、飛行機が安全である乗り物だとアピール出来てるとは恐れ入った。それが宣伝臭くないし、実際、真実なのが映画を観てたら良く分かりました。よく、飛行機はこの世で一番安全な乗り物なんて言われますが、その言葉の意味がこれを観たら分かります。飛行機って、どうしても墜落した時の悲惨さ、絶望的さで、安全なイメージを持ち難いんですよ。私なんて未だに「あんな鉄の固まりが空飛ぶなんて信じられん」と思ってますからね。タイムスリップした侍か。が、飛行機ってのは、よっぽど作為的、人為的な何事かが起こらない限り落ちるシロモンではないんだなーって。つー訳で、私みたいな、イマイチ飛行機を信用せず、率先して乗りたいと思わない人間にこそ、(日本には新幹線という大変便利な乗り物がございますですハイ)観て欲しいというか、観て安心して欲しいというか。飛行機ってこんなに安全な乗り物なんだーって心から思えますよ。これで気持ちを楽にして乗れるわ。矢口監督作品として観ると少し物足りないけど、意義があるといいか、こういう映画もあった方がいいなって思える良い映画だと思います。



『イエスタデイズ』・・・・・こんな映画が公開されてる事を世間の人は果たしてどれぐらい知っているのか・・・・・これは塚本高史主演で本多孝好の40万部を越えるベストセラー小説の短編の一つを映画化したものらしいです。ごめん、私、本多孝好って人、この映画まで全く知らなかった。(笑)40万部っつーのも宣伝に使うのには微妙な数字だしなぁ。まぁ、今、40万部売れるってなかなか大したもんだとは思いますがね。この映画が、ま〜〜〜殆ど宣伝されてるのを見た事がない。テレビでこの作品を紹介されてるのも1回も見てないし、勿論、CMもやってない。で、インターネットで宣伝されてるかって言われたらこれまた全然。國村隼とか、風吹ジュンとか、俳優は良いとこ揃えてんのにねぇ。こういう、そこそこ知られた俳優が出てるにも関わらず全くメディアで取り上げられない映画ってたまーにありますが、これは作品として、とても良かったので、ちょっとでも力になれたらなって思いました。こういうのって口コミが全てだもんね。この映画、私が今まで観た邦画で、ベスト5に入るぐらい大好きな『タイヨウのうた』に少し似てる感じがしたのね。まぁ、内容は全然違うんだけど、同じ若い監督の初長編監督作品だからかなぁ。それとも、この映画の監督・窪田崇が『タイヨウのうた』を好きなのか?(笑)全く同じ病院が出て来たり、同じような浜辺が出て来たり、バス停がやたら出て来たり。同じようなロケーションが多いんだよね。余命僅かな人間は出て来るけど、タイヨウ〜とは全然違う話なんだけどね。気のせいかな〜?塚本高史君の起用もそれじゃねぇの?みたいな。まぁ、こんな考え方は私ぐらいだと自信ありますが。
これは気持ちのいいぐらい優しい映画でしたわ。どの登場人物にも等しく感情移入出来るように作られてるのね。観る側がどんな人間でも、誰の立場に立っても共感出来る。きめ細やかなストーリーの構成はお見事でした。一応、ストーリーを紹介すると、余命僅かの父親から昔の恋人探しを頼まれた息子が、父親から渡されたスケッチブックを開く度に過去の父親とその恋人に出会う・・・・・ってファンタジーっぽい話なんだけど、これが全然ファンタジーには描かれてない。めちゃめちゃ現実と寄り添った形で話が進行して行くんだな。この辺の見せ方は上手いなーって思った。そこに恋愛やら親子の関係やら色々描かれていくんだけど、その人物への目線が優しいんだよね。映画としては、ちょっとセリフが臭かったり、あと、演出にも物足りなさは感じたんだけどね。長編初監督という窪田崇には才能の閃きみたいなもんは残念ながら感じなかったけど、彼の映画に対する姿勢はとても真摯に感じたわ。映画の中のメッセージがドストレートに響いてくるのがね。この人、根っから素直なんだろうな。(笑)俳優は誰も彼も物凄くハマってて感心した。特に國村隼の若い頃の和田聰宏は大成功だったんじゃ?あの若い頃と歳を取った父親の繋がりが実は一番重要なんだよね。あと、若い頃の父親の恋人・真山澪役の原田夏希がとにかく美しく撮られてて、佇まいも正に女神になってました。30年前って設定に合ったレトロな雰囲気も良かった。この若い2人のキャスティングの成功は大きいなと。他のキャストも良かったけどねーカンニング竹山とか、柳沢ななとかさ。他にも有名な人がちょこちょこ出て来ます。結構、豪華。あ、母親役の風吹ジュンの存在はめちゃデカイんだわ。彼女の母親のお陰でこの映画がこんなにも肯定的になれるんだなって。あとは主演の二人。國村隼塚本高史。國村さんはもう居るだけでいいよね。(笑)彼が居ると居ないでは映画の印象がガラって変わるだろうな〜。ここの父親役に変なの持ってこれないもん。こんな父親居たらいいなーって一つの理想系なんだな。だからサントリーウィスキーのあのCMな訳だ。黙って何もかも受け留める大きな父親ってのにピッタリでした。んで、反抗息子の塚本高史。これがまぁ〜〜、いちいち子供みたいな反抗しやがるんですよ。(笑)これって、主役を高校生ぐらいに設定した方がしっくりくるんじゃ・・・・・なんて思ったりもするんだけど、塚本高史が演じれば問題なし。ま〜その甘えん坊な反抗息子が似合うこと似合うこと。んで、彼はいつでも自然体なんで、すっと彼の視点になれて色んなキャラクターにとても感情移入し易かったんですね。この人、泣き方に技術を感じないのもいいんだよねー。『イキガミ』もそれで泣けたんだっけ。今回もやっぱそこで落涙。まんま思うツボだけども気持ち良く泣けました。そうだ、この映画は主題歌がめちゃめちゃいいんだよー榎本くるみの『イエスタデイズ〜大切な贈りもの〜』って曲。これタイトルで分かるようにこの映画の為に作られた曲なんだよね。やっぱ主題歌はこうでなくちゃ。この歌がエンドロールと共に流れた時に堰を切ったみたいにダーッと涙が出て止まらなかった。自分でも笑えるぐらい。あ〜歌で泣けるっつーのも『タイヨウのうた』っぽいんだよなぁ。私は常々、泣けるから良い映画ではないと言ってますが、この映画は今年観た中で一番泣けました。自分の泣きのツボにズドンとハマったみたい。映画としての採点は★3つ半は正直甘いかもしんないけど、結局、好きか嫌いかだからね。私はこの映画大好きです。もう1回観たいな。色んな人に観て欲しい映画です。