『第9地区』

これはまさかの映画。何て言ったらいいんだろう・・・・・・・・・。

第9地区』 ★★★★

いや〜〜〜これがアカデミー賞に作品賞でノミネートされたのが不思議でならない。この映画、漏れ出て来る情報を拾い集めても、アカデミー賞にノミネートされた理由がまるで分からないので、一体何がどうなってるのか自分の目で確かめようと映画館に観に行ったんですが、映画を観終えた今、やっぱり、何でノミネートされたのか分からない。(笑)いや、良く出来た作品ですよ。すんげぇ面白かったですよ。アイデアと脚本がいいんだろうなぁ。でも、どう考えたってアカデミー賞なんて言葉から無縁の映画だと思うんですが。よく見たらアカデミー賞の前に「『映画秘宝』版」とか付いてないか・・・・?これどう考えたっておバカB級映画だよねぇ?私の見方が間違ってんのか?いや、やっぱりバカ映画だって!
この映画に興味のある方は、取りあえず、アカデミー賞ノミネートってフィルターを外して観て下さい。決してそんな高尚な作品じゃござんせん。どっちかってぇと下品な描写のオンパレードだけどねぇ。その下品さも、アカデミー賞的なコーエン兄弟の洗練された下品さじゃなくって、どっちかてぇとポール・バーホーベンタイプです。お下劣タイプ。だから、バーホーベン映画好きには親指立てて笑顔で「行って来い!」って見送れるわ。『スターシップトゥルーパーズ』好きならより無問題。そういう映画が何を間違えたかアカデミー賞にノミネート。何があった。もう、監督がアカデミー審査員のお偉いさんの誰かに抱かれたとしか思えんわ。下品ですみません。だって映画が下品なんだもーん。

下品下品って言ってますが、この映画、その下品な部分から何から、本当に良く計算された上で練られてて、その斬新な切り口といい、物作りのお手本的な作品だと思います。低予算をアイデアでカバーして面白い作品を作るという、とても分かり易く良く出来た作品。この映画、ワンシーン、ワンシーンを切り取ると、割りと使い古された描写だったり、設定だったりもあるんですが、とにかく視点のずらし方が上手いんだな。そうキタか!ってね。元々完成された作品世界を、敢えて別の視点から見たような二次創作風な作品。完成された創造世界から更に別の世界を構築して全く違う作品にしてしまうという。例えば、『インデペンデンズデイ』をエイリアン側から見たら・・・・・・とか大雑把に言えばそんな感じ。そういう別視点から見た嘘っぱちの世界が、物凄く上手い味付けで妙な現実味があり、やけに説得力のある世界観になってて、そこが凄く面白かったです。文字に起こすと馬鹿馬鹿しい設定の数々なんですよ。でも、映画の中じゃアリになっちゃうんだなぁ。ネコ缶とか本当、バカにしてるとしか思えないのに。(笑)
映画の設定をざっくりと説明すると、何の前触れも無く唐突にエイリアンが地球に遭難して来てから、20年以上経った地球でのお話です。そのエビっぽいエイリアンは数を増し、高度な文明を有している割には頭が悪く、下等で粗暴な彼らを隔離してあるのが『第9地区』で、その治安の悪さから近隣住人の反発は日に日に強まり、ついに『第9地区』からエイリアンを別の場所に移住させる計画が・・・・・・・・・・・という、この映画観た100%の人が最初のこの設定で「ええええええええ!んなアホな!?」ってなると思うんですよ。でもそんなアホな設定も妙な説得力があるんだよなぁ。まず、『第9地区』のあるヨハネスブルグね。あそこ使うのズルイわ。あんなノンフィクションなのにフィクションとしか思えん設定の国使うの反則だよ。そこで有り得ない事もリアルに思えてくるもん。この映画の設定ってさ、慈愛と凶暴さの両方を持ち合わせている人間だからこそ、起こり得る矛盾だと思うのよね。実際、アレと共存の道を選ぶってのも『人間』なら有り得ない話じゃないんだもんねぇ。そういう人間の持つ矛盾が最初から最後まで描けてるんだな。主人公の言動や、敵対する人間側の描き方にね。あ、こう書くと何か高尚な作品に思えて来た!でも、この作品、人間の内面を描きたい!なんて目的じゃなくって、単純に娯楽作品として、その人間の矛盾さをスパイスにして面白おかしい作品にしてるだけだと思うけどね。

映画としては、結構、残酷なシーンもあるし、下品だし、観る者を選ぶ作品だと思います。でも、雑食で面白けりゃ何でもアリな人には最高に楽しめる映画じゃないかな?あまりに馬鹿げた設定も後からじわじわ来るというか、そのバカっぽさをもう1回確かめてみたくなるという。これは変に深読みせずにそのバカっぽさと、思わぬ熱さをそのまま楽しめばいいと思います。