『アイアムアヒーロー』

この漫画は何かの番組(確か『王様のブランチ』)で面白いと紹介されてて、気になってたんですが、kawarayaさんが面白いと紹介されてたので(id:kawaraya:20100412:p3)1、2巻とも衝動買いしてみました。これは本当に買って良かったです。すっごい面白かった!先が気になって気になって仕方ないですよ。2巻まで読んでもまだまだ話の序盤の序盤という感じなので、これからどういう展開になるのか楽しみです。この漫画の凄い所は、2巻までの下地のお陰で、今後どんな展開になっても面白いに違いないと確信出来る事でしょうか。名作の予感をビンビンと感じます。

この漫画に関しては、多分、頭真っ白の状態で読んだ方が楽しいので、どういうストーリーかは説明しません。どういう題材かすら知らない方がより楽しめるかもしんない。ただ、題材によっては合う合わないがあると思うので、ジャンルを一言で説明するとサバイバルホラーです。ただ、最初はどこに進んで行く話なのか全く分かりません。読んだ当初は「これは何マンガ?」と戸惑ってしまうかもしれないので、そこはグっと堪えてじっくりじっくり読んでみて下さい。長いプロローグをじっくり読み込むと、その先に物凄い世界が待ってるので、その振り幅でより楽しめると思います。私は先が気になったので、つい、急いで飛ばし気味に読んでしまったんですよね。後になって失敗したな〜〜じっくり読んどきゃ良かったと後悔したんですよ。そんな私からの些細なアドバイス絶対面白いと保証するので、焦らずじっくりと読むべし。

しかし、この漫画の表現力は凄い。圧倒的な画力による絵的なリアルもあるけど、一つ一つの表現が凄くリアル。そのリアルの蓄積で漫画の中に一つの現実が出来上がってるんですよね。漫画なのにまるで現実なんですよ。映画っぽいとかそういうリアルでなく、あくまで漫画的なリアル表現でその世界観を構築出来てるのが凄いんです。ただ、ちょっと分かり難いのが、主人公の鈴木英雄の妄想癖の表現。この表現が漫画独自の表現方法のせいで、現実と妄想の区別が付き難い点。ここで頭が混乱してしまう時が何回かあったんだけど、この辺の現実と妄想の混在はワザとだったんでしょうねぇ。後々になって、何でそういう表現方法を取ったのか、何となく理解出来てきます。あの辺も計算され尽くしてるよね。売れない漫画家という立場の主人公の言動なんてリアル過ぎて泣けて来ます。高い服や靴を身に着ける事で自分のアイデンティを高めたつもりになる気持ち、分かり過ぎるよ。どうしようもない感情のせいで恋人に一番最低な言葉を吐いてしまう気持ちも。

この漫画を読んで思ったのが、映像的リアルと漫画的リアルとはまるで違うって事かなぁ。これは映画『ソラニン』を観た時にも感じた事なんですけどね。この漫画、とてもリアルなんだけど、これを映像化するってなると、難しいだろうなぁと思います。この際、ディテールとかロケーションとか予算的な事は度外視してね。(笑)絵の世界を映像で具現化出来たとしても、この漫画の主題を映像的に表現するのは難しいだろうね。これは漫画ならではの作品だと思います。この作者は、漫画でしか出来ないリアル表現をとことん描いて行くつもりなんだろうなぁ。2巻の歩道橋でのタイヤのシーンの見開きコマなんて正にそうだよね。1コマ1コマ、止まった絵の漫画でないと出来ない表現。あの迫力に身震いしたわ。この漫画、主人公が漫画家なので、色んな漫画論を訴えてるんだけど、あれは完全に作者の言葉の代弁だよねぇ。花沢健吾は漫画の新たな可能性に挑戦しようとしてるんだろうな。それが時代を超えるものか、刹那的なものなのか。どっちにしても名作には違いなさそうです。


3巻は5月28日発売なんですね。発売日に買っちゃる!

アイアムアヒーロー 1 (ビッグコミックス)

アイアムアヒーロー 1 (ビッグコミックス)

アイアムアヒーロー 2 (ビッグコミックス)

アイアムアヒーロー 2 (ビッグコミックス)