『タイガー&ドラゴン』 〜厩火事の回〜

どーでもいいですが、『厩火事』という字を見ると、まだ『いやかじ』と読んでしまいます。(正解は『うまやかじ』)
今回は正に古田新太スペシャルでした。視聴者(というかクドカン好き)が望む古田新太を存分に魅せてくれたって感じで。怒鳴る新太暴れる新太泣かせる新太・・・孔子のコスプレ姿(?)まで見れました。クドカンは本当に古田さんが好きなんだなー。(笑)そして清水ミチ子がナイスアシストというか、アシストしつつも最後に全てを掻っ攫って行かれました。今回の話はきっぱりとゲスト中心でしたね。いつもはゲストとメインになるレギュラーキャラが絡んで話が進んでいくんだけど、今回の話は完全に上方まるお・まりも夫婦のお話でしたね。それでなくてもキャラクターの多いドラマなので登場人物の出演時間が少ないことに不満を持ってる方も多いかと思うんですが、この厩火事は夫婦中心で良かったかな。一作品としてかなり見応えありました。
逆に申し訳ないけど、今回はメグミと竜二のお話が要らなく思えたかな。2回目の鑑賞は全部ちゃんと見たけど、3回目はそこを早送りしてまるお・まりもの部分だけ見たいかもって思いました。結局、早送りしなかったけどね(^^)竜二の私生活なんてかなり面白かったんだけど(次長課長の河本も登場したし!)この話の時でなく違う回で見たかったかな。せっかく面白かったのに、この部分を余計に感じちゃったのが勿体無い気がします。上方まるお・まりお夫婦のお話をもっとじっくり掘り下げて見たかったように思うから余計にね。まるお・まりもの話だけで映画1本作れるような濃さでした。こんな夫婦の映画を観たい観たい。きっと映画館で号泣しちゃうことでしょう。でも、こういう話を連ドラの1話でサクッと軽くやっちゃうのが良さなのかもしれないね。笑いと泣きの絶妙さ。笑えて泣けるっていうのに私は一番弱いので、今回の話はもうもうグッときました。ただ、『タイガー&ドラゴン』として考えるとやっぱりいきなり出てきたゲストの話だったので、思い入れがちと弱いのが悔しい所です。古田さんが例えばどん吉(春風亭昇太)のようなポジションでレギュラーで出てる人だったら、そらもう確実にボロ泣きでしたよ。でも、ゲストだったからこそ良い話だなーと客観的に見れたのかもしれないんだけど。そこが、『木更津キャッツアイ』のオジーの死との違いかな。オジーの時は痛かったなぁ。すっごく痛かったです。古田さんは大好きだけど、やっぱりこのドラマではゲストはゲストなんで思い入れの深さはまだ弱いんですけど、時間が経ったらこの回の良さがもっと自分に入ってくると思います。3回見たけど、3回目に見た方が面白さと悲しさが伝わってきました。最後の看守(木更津の教頭!)とまるおのシーンでは三度目にして泣きそうになりました。あのシーンはズルイよ。あんなに面白いのにあんなに物悲しいってズルイ。刑務所の中で1人「君とはもうやっとれませんわー」と漫才のフリで言うまるおで最後終わるなんて。あーもう。。。。書いてて泣きそうになてきタヨ(痛)まりもはもう居ないから、まるおは二度と漫才出来ないんだよね。妻としても仕事のパートナーとしても長く連れ添ったまりもを失ったまるおって悲し過ぎるんだけど、でも、刑務所で1人看守相手にバカな事やってる。「笑うことと笑わせることしかオレの人生に必要ない」って言ってたもんなぁ。
ズルイと言ったら、まりもの遺影だけでまりもの死を表現しちゃうのね。クドカンは本当にあっさりと簡単に死を描くから、最初、呆気に取られてついて行けないんですよ。あそこ凄く悲しいのに、あまりに唐突で泣くに泣けないの。まりもの死については伏線が一杯張ってあったから予想は出来てたのに、遺影が出てきた時にはかなり動揺しました。一回目に見た時はあのまるおが霊前で「堪忍ニン!」って言うシーンも呆然と見てました。リアルに人の死に直面したみたいな感覚でしたよ。二回目に見た「堪忍ニン!」は古田さんの表情も相まって泣けた。この「堪忍ニン!」ってギャグはまるおの死んだお母さんが一人ぼっちのまるおを笑わそうとやってたギャグだけに余計に悲しいんですよね。
まりもと言えば、最後の漫才での「ウチが嘘吐く時は顔に出ます」と言うセリフの時の表情に色んな感情が見て取れるんですよね。まるおもそうなんだけど、あのシーンの解釈を視聴者に委ねたのは宮藤脚本なのか金子演出なのか分からないんですけど、凄いなって思います。こういう『観客に解釈を委ねる』っていうのは、冒険なんですよね。視聴者ははっきりとした答えを求めてがちだもんね。すっきりしないし。私も一度目の鑑賞の時はちょっとしこりが残りましたもの。でも、二度目に見るとそこに自分なりの答えを見つけようとしたりしてね。あちこちの伏線を確認する為に躍起になって何回も見たりして。(笑)結局、何度見たって答えは闇の中なんだけどね。こういう作品は実は作り手も答えをはっきりと考えてない方が多いし。でも、その方が印象に残ったりします。私の場合、その答えの無い面白さの最たる作品が『殺人の追憶』だったりするんですが。あ!DVD買ったんだよ『殺人の追憶』。
何人かの方が『厩火事』のダメ亭主のサゲ「お前の体に何かあったら、こんな風に楽して酒も飲めねぇ」というのが、実は女房の体を心配した亭主が照れ隠しで言った言葉だったんだと書いていたのを目にしたんですが、私は単純にこのオチを聞いた時、面白いなーしょうがないダメ亭主だなーと思っただけなんで、へ〜〜〜とエラい感心しました。最初にこの落語のあらすじ読んだ時、そんな考え全く無かったわー。そんな風に考えると、この噺は深いなぁ。